⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。本チェックリスト・テストは医学的診断ではありません。気になる症状がある場合は必ず医師にご相談ください。

「最近、物忘れが増えた気がする……」
「これって年のせい? それとも何か病気の前触れ?」
「親の物忘れが気になる。」

誰でも一度は感じる”物忘れ”。しかし、その中には脳からの重要なSOSサインが隠れていることもあります。

📋 このページでわかること
  • 普通の物忘れと「危険な物忘れ」の違い(比較表付き)
  • 自宅でできる物忘れセルフチェック15項目
  • リハビリ現場でも使われる3つの簡易テスト
  • 今すぐ受診を検討すべき「危険な症状」リスト
☑️ まずはセルフチェックしてみましょう
📝 物忘れチェックリスト(15項目)
  • 人の名前がぱっと出てこないことが増えた
  • さっき聞いたばかりのことを何度も聞き返してしまう
  • 大事な約束を忘れることがある
  • 物の置き場所を頻繁に忘れ、探し物が増えた
  • 会話の内容をすぐ忘れる
  • 数日前の出来事を全く思い出せない
  • 「何をしようとしていたか」を思い出せないことがよくある
  • 財布・鍵・通帳などをなくすことが増えた
  • 話の途中で、自分が何を話していたかわからなくなる
  • テレビや本の内容が、以前より理解できない
  • 同じ話を何度も繰り返していると指摘される
  • スケジュールや家計管理が難しくなった
  • 家族から「最近おかしいよ」と指摘される
  • 慣れた道に迷うことがある
  • 以前できていたことができない(料理・家電操作など)
💡 チェックが多いほど注意が必要です。特に後半(⑧〜⑮)に当てはまる項目が多い場合、または急に増えた場合は、早めに専門医へご相談ください。
⚠️ 「普通の物忘れ」と「危険な物忘れ」の違い

最大の判断ポイントは、「体験の一部」を忘れるのか、「体験そのもの」を忘れるのかです。

比較項目🟢 普通の物忘れ(加齢)🔴 注意が必要な物忘れ(病気)
忘れる範囲体験の一部(朝食のメニューなど)体験そのものを忘れる(朝食を食べたこと自体)
ヒントの効果あれば思い出せるあっても思い出せない
自覚症状「忘れた」という自覚あり「忘れた」という自覚がない
生活への支障日常生活に大きく支障なし探し物・同じ質問で生活に支障が出る
進行の有無緩やかまたは変化なし徐々に、または急激に悪化する
🧪 自宅でできる「物忘れ」簡易テスト(リハビリ評価を参考に)

脳の記憶・処理能力(短期記憶・ワーキングメモリ・エピソード記憶)を簡単に確認できるテストです。3つをセットで行うと精度が上がります。

3単語記憶テスト
確認する機能:近時記憶(エピソード記憶)
【やり方】
  1. 「りんご・電車・犬」の3つの単語を覚えます。
    (互いに関係のない単語を使うとより正確です)
  2. そのまま②・③のテストを行い、約1〜2分後に3つの単語を思い出します。
⚠️ 要注意のサイン
  • 1つも思い出せない
  • 「りんご」と言われてもヒントがあっても思い出せない
🧠 このテストは側頭葉内側(海馬)の近時記憶機能を反映します。MCI(軽度認知障害)のスクリーニングとしてリハビリ現場でも広く使用されています。
数字逆唱テスト
確認する機能:ワーキングメモリ(作業記憶)
【やり方】
  1. 周囲の人に「3・8・1」のように連続しない3つの数字を言ってもらいます。
  2. 聞いた順番を頭の中で逆にして「1・8・3」と答えます。
⚠️ 要注意のサイン
  • 逆唱がどうしてもできない
  • 途中で数字が混乱してしまう
🧠 ワーキングメモリは主に前頭前野(DLPFC)が担います。数字逆唱は「情報を一時的に保持しながら操作する」能力を測定し、前頭葉機能の低下を早期に捉えることができます。
会話・エピソード記憶テスト
確認する機能:エピソード記憶(海馬の長期保存)
【やり方A:会話記憶テスト】
  1. 家族と数分間、普通の会話をします。
  2. その後「今どんな話をしていたか」を説明してみます。
【やり方B:エピソード記憶テスト】
  1. 「昨日の晩ごはん」や「昨日どこかに行ったか」を思い出します。
  2. それを時系列の順に話してみます。
⚠️ 要注意のサイン
  • 会話の内容が全く説明できない
  • 昨日の出来事が時系列でバラバラ、または全く思い出せない
🧠 エピソード記憶の障害は側頭葉内側(海馬・傍海馬回)の機能低下を示します。このテストは軽度認知障害(MCI)の早期発見に特に有効です。
🚨 今すぐ受診を検討すべき「危険な症状」

以下の症状が伴う場合は、早急に専門医(脳神経外科・神経内科・物忘れ外来)を受診してください。

  • 急激に物忘れが悪化している(数週間〜数ヶ月以内)
  • 会話が成り立たない(言葉のキャッチボールができない)
  • 慣れた道で迷う・今の時間や日付がわからない
  • 頭痛・吐き気・手足のしびれや麻痺を伴う
  • 明らかに性格や気分が変わった
🏥 受診時に伝えるべきポイント(メモして持参しよう)
  • 1いつから症状が始まったか(急に始まったか・じわじわ増えたか)
  • 2頻度(毎日か・週に何回か・最近増えたか)
  • 3家族から見た変化(本人が気づかない変化が診断に最も重要です)
🔁 まとめ:「いつもと違う」という直感を大切に

物忘れは誰にでも起こるものですが、「いつもと違う」という直感には大切な意味があります。

「もしかして……」と不安を感じたら、まずは今回のチェックリストを参考に、早めの確認を心がけましょう。

また、「外では普通でも、家の中ではおかしい」というケースもあります。本人だけでなく、ご家族の観察も非常に重要です。遠方のご両親が心配な方も、電話でエピソード記憶テストをすぐ試せます。

*本記事は簡易チェックであり、診断を確定するものではありません。近くの医療機関での検査をお勧めします。

ZUN体験談 脳腫瘍サバイバー × PT(理学療法士)の視点から

私が脳腫瘍を発症したとき、最初の変化は「物忘れ」ではなく「なんとなく頭がぼんやりする」という感覚でした。普通ならパッと出てくる物の名前が出てこなくなり、「疲れかな」と思っていたのです。

しかし振り返ると、それは明らかな記憶力の変化でした。PT(理学療法士)として日々患者さんの認知機能を評価していた自分が、自分の変化に気づけなかったのです。「自覚がない」ことがいかに怖いか、身をもって知りました。

だからこそ、この記事のチェックリストを「自分自身のために」も、「大切な家族のために」も、定期的に使っていただきたいと思います。変化に早く気づいた分だけ、選択肢は広がります。

📚 参考文献
  • Larson EB, et al. “Geriatric Evaluation and Treatment of Age-Related Cognitive Decline.” StatPearls [Internet]. NCBI Bookshelf. NBK580536
  • Petersen RC. “Mild Cognitive Impairment.” StatPearls [Internet]. NCBI Bookshelf; 2023. NBK599514
  • Murman DL. “Major Neurocognitive Disorder (Dementia).” StatPearls [Internet]. NCBI Bookshelf. NBK557444
  • Stephan BCM, et al. “The borderland between normal aging and dementia.” Expert Rev Neurother. 2017. PMC5509201
  • Kessels RPC, et al. “Reliability of working memory assessment in neurocognitive disorders: a study of the Digit Span and Corsi Block-Tapping tasks.” J Clin Exp Neuropsychol. 2020. PMC7194262
  • Rabin LA, et al. “Subjective cognitive decline: Memory complaints, cognitive awareness, and metacognition.” Neuropsychol Rev. 2024. PMC11497716
  • Buckley RF, et al. “Understanding Memory Dysfunction.” Semin Neurol. 2021. PMC8170590
  • Belleville S, Bherer L. “Memory, aging and the brain: Old findings and current issues.” Prog Brain Res. 2023. PMC10494262
  • Ismail Z, et al. “The Mini-Cog, Clock Drawing Test, and Three-Item Recall Test: Rapid Cognitive Screening Tools with Comparable Performance.” J Alzheimers Dis. 2021. PMC8482262
  • 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」日本神経学会・日本老年医学会・日本認知症学会 共同編集. https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html
⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。本チェックリスト・テストは医学的診断ではありません。不安な症状がある場合は、脳神経外科・神経内科・物忘れ外来などにご相談ください。