⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。気になる症状がある場合は必ず医師にご相談ください。
😤「最近、急に怒りっぽくなった」
🎵「大好きだった趣味に全く興味を示さない」
💼「仕事のミスが目立つようになった」

これらは単なる疲れや「頑固さ」ではなく、脳の前方にある「前頭葉」からのSOSサインかもしれません。

前頭葉は「感情・意欲・理性・行動のコントロール」を司る脳の司令塔。ここに腫瘍ができると、「その人らしさ」が少しずつ、でも確実に変化していきます。

  • 日常生活で家族が気づきやすい「感情・意欲・実行機能」の変化
  • うつ病・認知症との見分け方(比較表付き)
  • 何科を受診すべきか・医師への伝え方のコツ
  • 脳腫瘍サバイバーZUN自身が経験した「気づきにくかった変化」

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ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

😤 1. 「性格・感情」の違和感チェック

前頭葉の腫瘍で最も多く、かつ最初に気づかれやすいのが性格の変化です。本人はほとんど自覚できないため、家族の観察が重要な手がかりになります。

🔴 感情コントロールの変化 — 周囲が最初に気づくサイン
  • 🔴要注意以前なら笑って流せたことに激昂したり、場所をわきまえず怒鳴ったりする
  • 🔴要注意順番待ちができなくなった、子どものようなわがままが増えた(抑制が利かない)
  • 🟠注意人が傷つくことを平気で言う、下品な言葉を口にするようになった(脱抑制)
  • 🟠注意以前は喜んでいたことにも反応せず、表情が乏しくなった(感情鈍麻)
  • 🟡確認笑ったり泣いたりの切り替えが急になった、感情の波が激しくなった
🧠 ZUNの体験談(前頭葉腫瘍サバイバー)

私自身は全く自覚がありませんでした。でも妻から「最近怒りっぽいよ」と言われることが、じわじわと増えていたのです。
本人は「そんなつもりはない」「普通に話しただけ」と感じている——この「自覚のなさ(病識欠如・アノソグノシア)」こそが、前頭葉腫瘍の症状の特徴の一つです。家族の「いつものあの人と違う」という直感を大切にしてください。

💡 PTからの視点:前頭葉の眼窩前頭皮質(OFC)が障害されると「脱抑制」が生じ、背外側前頭前野(DLPFC)が障害されると「無関心・無気力」が生じます。どちらも「性格が変わった」と見えますが、神経学的には異なるメカニズムです。

😶 2. 「意欲・行動」の違和感チェック

この段階の症状はうつ病や認知症と非常によく似ているため、見逃されやすいのが特徴です。

🟠 意欲・日常行動の低下 — うつ病と間違えやすいサイン
  • 🔴要注意お風呂に入りたがらない、毎日同じ服でも気にしないなど、身だしなみに無頓着になった
  • 🔴要注意ずっと続けていたゴルフ・読書・手芸などを「面倒くさい」と突然やめた
  • 🟠注意何をするでもなく1日中ぼーっとしている、テレビの前から動かない
  • 🟠注意トイレを失敗しても恥ずかしがらない、困った様子がない(排尿抑制の低下)
  • 🟡確認自分から何かをしようとしなくなった(自発性の低下・意欲の消失)
💡 「やる気がないのは怠けているから」と責めてしまいがちですが、前頭葉の損傷による意欲低下は本人の意志でコントロールできません。ご家族の理解がとても重要です。

📋 3. 「実行機能(仕事・家事)」の違和感チェック

「計画を立て、段取りして、結果を確認する」という一連の能力を実行機能(遂行機能)と呼びます。前頭葉はこの機能の中枢であり、障害されると仕事や家事に明確な影響が出ます。

🟠 実行機能の低下 — 仕事・家事で気づくサイン
  • 🔴要注意複数のメニューを同時に作れなくなった、料理の味付けや段取りが極端に変わった
  • 🔴要注意スケジュール管理ができなくなった、以前では考えられない初歩的な仕事のミスが増えた
  • 🟠注意状況が変わっても同じ行動・言葉に固執して修正が効かない(保続・固執)
  • 🟠注意物事の優先順位がつけられなくなった、手をつけるまでに異常に時間がかかる
  • 🟡確認買い物リストを持っていても余計なものを買ったり、必要なものを忘れたりする
🧠 ZUNの体験談(前頭葉腫瘍サバイバー)

私の場合、料理をしながら他の家事をすると、料理(火をつけっぱなし等)をしていたことをすっかり忘れてしまうことがありました。「何かを煮ていたな」という感覚すら消えてしまう——。
当時は「疲れているからかな」と思っていましたが、今振り返ると、これはまさに実行機能の障害でした。複数のことを並行して処理するワーキングメモリが低下していたのだと、PTとして後から気づきました。

🔍 4. 前頭葉の症状と「認知症・うつ病」の見分け方

前頭葉腫瘍の症状は認知症やうつ病と非常に似ており、誤診や受診の遅れにつながりやすい点が問題です。

比較ポイント🔴 前頭葉腫瘍認知症(アルツハイマー)うつ病
変化の速度数週間〜数ヶ月で急激に変化することも年単位でゆっくり進行精神的なきっかけがあることが多い
記憶力初期は保たれていることが多い覚えられない・忘れた自覚がない集中力が落ちて覚えられない
本人の自覚ほとんどない(病識欠如)徐々に自覚が失われる自分の不調に気づいていることが多い
身体症状軽い麻痺・頭痛・尿失禁を伴うことがある身体は元気なことが多い眠れない・食欲がない
画像検査MRIで腫瘍を確認できるMRIで脳萎縮が見られるMRI・CT上は異常なしのことが多い
🔑 重要:「変化が急である」「身体症状(頭痛・手足のしびれ)を伴う」場合は、脳神経外科でのMRI検査を最優先に検討してください。

🏥 5. 「怒りっぽい・変わった」と感じたら何科へ?

前頭葉の症状は本人が自覚していない(病識がない)ことがほとんどです。ご家族が「以前のあなたと違うから、一度検査してみよう」と優しく促すことが大切です。

📋 受診ガイド
受診すべき科:脳神経外科、または脳神経内科
「精神科・心療内科」を最初に選ぶと、脳の病変が見落とされる恐れがあります。
医師への伝え方のコツ:「性格が変わった」「意欲がなくなった」など具体的なエピソードをメモして医師に渡してください。
例:「3ヶ月前から料理中に別のことをすると鍋を忘れる」「妻に怒りっぽいと言われるようになった」
主な検査:頭部MRI(造影)が基本。腫瘍が疑われる場合は造影剤を使ったMRIで詳細に評価します。
💡 医師への症状の伝え方についてさらに詳しくは、こちらの記事も参考にしてみてください。
⚠️【要注意】脳腫瘍の初期症状チェック|見逃しやすいサイン
❓ よくある質問
Q. 前頭葉腫瘍の症状と、うつ病・認知症はどうやって見分けますか?
前頭葉腫瘍では「頭痛・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状」「てんかん発作」を伴う場合があり、また症状の進行が比較的速いことが特徴です。うつ病は感情症状が主体ですが前頭葉腫瘍では認知機能・実行機能の低下が目立ちます。認知症との違いは発症年齢(比較的若い)・頭痛の有無などです。いずれも自己判断は難しく、MRIを含む画像検査が確定診断に必要です。
Q. 家族の性格が変わったと感じたとき、まず何科を受診すればいいですか?
まず「脳神経外科」または「脳神経内科」を受診し、頭部MRIを撮影してもらうことをおすすめします。精神症状が強い場合は精神科や心療内科に先に行くケースもありますが、器質的疾患(脳腫瘍など)の除外を先に行うことが重要です。受診時には「いつ頃から」「どのような変化があったか」を具体的にメモしておくと診断の助けになります。
Q. 前頭葉腫瘍で「本人は症状に気づかない」のはなぜですか?
前頭葉は「自己モニタリング(自分の状態を客観的に把握する)」機能を担っているため、この部位が障害されると自分の変化に気づく能力(病識)自体が低下します。これを「アノソグノシア(病態失認)」と呼びます。本人が「変わっていない」と主張するのは意固地なのではなく、神経学的な症状の一つです。ご家族の観察と記録が診断において非常に重要です。
Q. 実行機能の低下は、リハビリで回復しますか?
脳には「神経可塑性(ニューロプラスティシティ)」があり、適切なリハビリで一定程度の回復が期待できます。高次脳機能リハビリテーション(作業療法・言語聴覚療法)では、日常生活動作の訓練・代償手段の習得・環境調整などを行います。回復の程度は腫瘍の大きさ・場所・術後の経過によって異なります。早期からのリハビリ介入が回復の鍵となります。
Q. チェックリストに複数当てはまりました。緊急性はありますか?
チェック項目に複数当てはまる場合は、早めに脳神経外科での受診・MRI検査をおすすめします。特に「急激な性格変化」「ひどい頭痛・嘔吐」「てんかん発作」を伴う場合は緊急性が高まります。一方でゆっくり進行している場合も「早期発見・早期治療」の観点から受診を先延ばしにしないようにしてください。
📌 まとめ:その変化は「病気」のせいかもしれません
  • 「最近怒りっぽい」「趣味をやめた」「仕事のミスが増えた」は前頭葉からのSOSの可能性がある
  • 本人はほぼ自覚できない。家族の「いつもと違う」という感覚が最大の診断材料
  • うつ病・認知症との違いは「変化の速さ」「身体症状の有無」「MRI所見」
  • 迷ったら脳神経外科・脳神経内科でMRI検査を。早期発見が予後を大きく左右する

「性格が変わったのは本人の努力が足りないから」と責めてしまう前に——それは脳腫瘍が原因で、本人の意志ではどうにもできないことかもしれません。大切な人の変化に気づいたら、迷わず専門医へ。 — ZUN

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📖 参考文献・エビデンス
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  2. Ioannou P, et al. “Neuropsychiatric symptoms as early indicators of brain tumors.” Brain Sci. 2024. PMC11661549 — 脳腫瘍の早期指標としての神経精神症状
  3. Bunevicius A, et al. “Prevalence of changes in personality and behavior in adult glioma patients: a systematic review.” Neuro Oncol Pract. 2020;7(2):177-187. PMC6657393 — 成人グリオーマ患者における性格・行動変化の有病率
  4. Pelletier G, et al. “Psychiatric symptoms in glioma patients: from diagnosis to management.” Psychooncology. 2015;24(12):1585-1597. PMC4467748 — グリオーマ患者の精神症状:診断から管理まで
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  6. Stuss DT, Benson DF. “Frontal lobe syndrome: subtypes of acquired personality disturbances.” Brain Cogn. 2018. PMC6120760 — 前頭葉損傷による性格変化のサブタイプ
  7. Gehring K, et al. “The Impact of Brain Tumors on Emotional and Behavioral Functioning.” Cancers. 2025. PMC11705757 — 脳腫瘍が感情・行動機能に与える影響
  8. Paganini M, et al. “Executive Functions in a Patient with Low-Grade Glioma: A Case Report.” Brain Sci. 2024. PMC11053647 — 低悪性度グリオーマにおける実行機能障害
  9. Barrash J, et al. “Personality in Frontal Lobe Disorders.” Curr Neurol Neurosci Rep. 2018. PMC5786154 — 前頭葉疾患における性格変化のメカニズム
  10. Thibaut A. “Anosognosia.” StatPearls. NCBI Bookshelf. NBK513361 — 病識欠如(アノソグノシア):前頭葉損傷との関係
⚠️ 本記事は医療行為・診断の代替ではありません。気になる症状がある方は、必ず脳神経外科または脳神経内科を受診してください。記事内の情報は執筆時点(2025年)のものです。
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ZUN
🩺 理学療法士|脳腫瘍サバイバー|長野県在住 2016年に理学療法士の国家資格を取得し、総合病院の急性期病棟で 脳卒中・整形外科リハビリを担当(糖尿病療養指導士/呼吸器リハ研修・がんリハ研修修了)。 2024年、悪性星細胞腫グレード3を発症。手術・放射線・化学療法を経て 現役で職場復帰。「医療者の知識」と「患者の実体験」の両方から、 脳腫瘍患者さんとご家族の力になる情報を発信しています。 詳細プロフィールは👇https://zunsyuyotaiken.com/profile/