⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と公的情報をもとに作成した情報提供記事です。制度の詳細・適用条件は自治体・加入保険によって異なります。必ず主治医・ソーシャルワーカー・職場の担当窓口にご確認ください。

「薬代が毎月かなりかかる…」「制度があると聞いたけど、どこに相談すればいいの?」
そんな不安、一人で抱え込まないでください。知っているかどうかで、年間の医療費が大きく変わる制度があります。

📋 このページでわかること
  • 脳腫瘍術後に抗てんかん薬が必要な理由と、発作がない人でも使える支援制度
  • 自立支援医療(精神通院医療)で薬代が3割→1割になるしくみと申請手順
  • 社会保険の「付加給付金」で医療費をさらに大幅に減らす方法
  • ZUN自身の実体験:年間医療費100万円超→約30万円に圧縮できた話
  • 制度を組み合わせたときの自己負担シミュレーション

脳腫瘍の術後に処方される抗てんかん薬。「発作は起きていないのに、ずっと飲み続けなきゃいけないの?」「薬代が毎月かなりかかる……」そんな悩みを持つ方は多いと思います。

実は、知っているかどうかで年間の医療費が数十万円単位で変わる支援制度があります。この記事では、自立支援医療制度と社会保険の付加給付金を中心に、脳腫瘍サバイバーとして活用できる医療費支援の全体像を解説します。

💰 ZUNの実体験|制度を使ったら医療費がこう変わった

制度活用前(年間)

100万円以上

制度活用後(年間)

30万円

自立支援医療(1割負担)+ 社会保険の付加給付金(月25,000円上限)の組み合わせで実現。

🧠 脳腫瘍術後になぜ抗てんかん薬が必要なのか

開頭手術では脳に直接触れるため、術後にてんかん発作が起きやすい状態になります。術後てんかんの発生頻度は10〜30%程度とされており、予防・抑制のために抗てんかん薬(レベチラセタム・フェニトインなどの発作を抑制する薬)が処方されます。

⚡ 発作が起きている方

  • 発作の抑制が目的
  • 薬の血中濃度(血液中の薬の濃さ)を安定させることが重要
  • 自己中断は絶対NG

🛡️ 発作が起きていない方

  • 予防・リスク管理が目的
  • 主治医が「継続が必要」と判断した場合は服用を続ける
  • 支援制度の対象になる ✅
📌 「発作がないのに薬を飲み続けるの?」と感じた方へ 発作が出ていない状態は「薬が効いている」サインである場合がほとんどです。自己判断で中止すると発作再発のリスクがあり、運転・就労にも影響します。減薬・中止のタイミングは必ず主治医と相談してください。

💊 自立支援医療制度(精神通院医療)とは

てんかんは日本の法律(精神保健福祉法)上、「精神障害」に分類されます。

💡 「精神障害」という言葉に不安を感じた方へ これは制度上の分類であり、「精神障害者」と認定されるわけではありません。申請しても職場や周囲に知られることはなく、日常生活への影響はありません。医療費を減らすための手続きとして、安心して活用してください。

この分類のおかげで「自立支援医療制度」の中の「精神通院医療」という枠組みで申請でき、抗てんかん薬を含む精神科・神経科の外来診療・投薬の自己負担が3割→1割になります。

項目内容
制度名自立支援医療制度(精神通院医療)
根拠法障害者総合支援法
自己負担原則1割(通常3割→1割に軽減)
月額上限所得に応じて月2,500円〜20,000円の上限設定あり(低所得者は0円)
対象てんかん発作がない場合も、主治医が継続投薬を必要と判断すれば対象 ✅
有効期間1年ごとの更新が必要
申請先市区町村の障害福祉課(健康福祉課・社会福祉課など自治体によって名称が異なる)
📝 申請の流れ
1
主治医・ソーシャルワーカーに相談する

「自立支援医療(精神通院医療)の診断書を書いていただけますか?」と相談。脳神経外科・神経内科・精神科のいずれの医師でも作成可能です。入院中や外来でMSW(医療ソーシャルワーカー)がいる場合は一緒に相談すると書類の準備がスムーズです。

2
必要書類を揃える

①医師の診断書(所定様式・医師が作成) ②申請書(窓口または自治体HPで入手) ③健康保険証 ④マイナンバーカード(または通知カード) ⑤本人写真1枚(自治体によって不要な場合もあり)。事前に市区町村窓口に電話確認するとスムーズです。

3
市区町村の障害福祉課に申請する

住民票のある市区町村の窓口(障害福祉課・健康福祉課・社会福祉課など)に書類を提出します。「精神通院医療の申請をしたい」と伝えれば対応してもらえます。

4
受給者証が届く(約1〜3か月後)

申請から1〜3か月程度で「自立支援医療受給者証」が自宅に届きます。以降は病院・薬局で健康保険証と一緒に提示するたびに1割負担が適用されます。

⚠️ 申請できる医療機関・薬局が指定される 自立支援医療は「指定された医療機関・薬局のみ」1割負担が適用されます。申請時に利用する病院・薬局を登録するため、変更する場合は手続きが必要です。

💴 社会保険の「付加給付金」|知らないと損する上乗せ給付

自立支援医療で1割負担になっても、抗がん剤治療や放射線治療と並行している脳腫瘍患者の場合、月々の医療費はまだ相当な金額になることがあります。そこで大きな助けになるのが「付加給付金」です。

📌 付加給付金とは?

「付加給付金」とは、健康保険組合(社会保険)が独自に設けている追加の給付制度です。高額療養費制度で決まった自己負担上限額からさらに上乗せで給付され、実質的な自己負担を大幅に減らせます。

📌 付加給付金のしくみ

  • 健康保険組合が独自に設定
  • 例:月25,000円を超えた分を給付(ZUNの場合)
  • 申請すると超過分が後で振り込まれる
  • 会社の保険担当・健保組合に確認が必要

⚠️ 注意点

  • すべての健康保険に付加給付があるわけではない
  • 国民健康保険には原則なし
  • 健康保険組合(大企業・組合健保)にある場合が多い
  • 上限額は組合によって異なる(25,000円・30,000円など)
💡 まず確認すること 健康保険証の「保険者名」を見てください。「〇〇健康保険組合」と書かれていれば付加給付がある可能性が高いです。確認先は職場の総務・人事担当、または健康保険組合の窓口に「付加給付はありますか?」と聞くだけでOK。ZUN自身も「付加給付金というものがあると聞きましたが適応されますか?」と事務に聞いたらすぐに対応してくれたので、問い合わせのハードルはとても低かったです。
🌿 ZUN体験談|第7話・第9話より

「年間100万円超の医療費が、制度を使ったら約30万円になった」

悪性星細胞腫グレード3の標準治療(放射線+テモダール12コース)を受けていた私は、手術・治療費・薬代・通院費が積み重なり、年間の医療費が100万円を超える時期がありました。

転機になったのは、自立支援医療(精神通院医療)の申請と、職場の健康保険組合の付加給付金の存在を知ったことです。職場の事務担当に「付加給付はありますか?」と聞いたところ、すぐに制度の説明をしてくれて、申請に必要な書類も教えてもらいました。

私の健保では月25,000円を超えた自己負担分が給付される制度があり、自立支援医療の1割負担と組み合わせることで、年間の実質負担額を約30万円程度(月25,000円×12か月)にまで抑えることができました。

「制度のことは知らなかった」「聞くのが恥ずかしかった」という声をよく聞きますが、これは当然の権利として設けられている制度です。ぜひ遠慮なく確認してみてください。

📊 制度を組み合わせたときの負担シミュレーション

以下は、月の医療費が10万円かかった場合の自己負担額の変化イメージです(所得・加入保険によって異なります)。

制度の状態月の自己負担(目安)年間換算
何も使わない(3割負担)約30,000円約360,000円
自立支援医療のみ(1割負担)約10,000円約120,000円
自立支援医療+付加給付金(月25,000円上限の場合)最大25,000円(1割分が上限を超えた場合はさらに給付)最大300,000円
⚠️ このシミュレーションはあくまでイメージです 実際の負担額は医療費の総額・所得区分・加入している健康保険・自立支援医療の月額上限設定・付加給付の条件によって大きく異なります。正確な試算は主治医・MSW・職場担当者にご相談ください。

🤝 まず誰に相談すればいい?

  • 🏥
    病院のソーシャルワーカー(医療社会福祉士・MSW)

    入院・外来を問わず、医療費支援・制度申請のプロです。「自立支援医療の申請をしたい」「医療費が心配」と伝えるだけで、その方の状況に合った制度を一緒に整理してくれます。まずここに相談するのが最も確実です。

  • 👨‍⚕️
    主治医

    自立支援医療の診断書作成をお願いする窓口です。「自立支援医療(精神通院医療)の申請を考えているので診断書を書いていただけますか?」と伝えれば対応してもらえます。

  • 🏢
    職場の総務・人事担当(または健康保険組合)

    付加給付金の有無・申請方法を確認する窓口です。「付加給付はありますか?」「高額な医療費がかかっているのですが、何か申請できる制度はありますか?」と聞くだけでOKです。

  • 🏛️
    市区町村の障害福祉課

    自立支援医療の申請窓口です。「精神通院医療の申請について聞きたい」と電話で事前確認すると、必要書類や流れをわかりやすく教えてもらえます。

❓ よくある質問

てんかん発作が一度も起きていませんが、自立支援医療は使えますか?

はい、発作が起きていない場合でも、主治医が「抗てんかん薬の継続が医療上必要」と判断した場合は申請対象になります。脳腫瘍術後の予防投薬もその対象に含まれる可能性があります。まず主治医に「自立支援医療(精神通院医療)の診断書を書いてもらえるか」を相談してみてください。

自立支援医療を申請すると「精神障害者」という扱いになりますか?

自立支援医療(精神通院医療)はてんかんを含む精神疾患の治療費支援制度です。申請したこと自体は職場などに自動的に通知されることはありません。精神障害者保健福祉手帳(精神障害のある方が取得できる手帳で、さまざまな支援が受けられます)とは別の制度で、手帳の取得は任意です。医療費負担の軽減だけが目的であれば、手帳の取得なしに自立支援医療だけを申請することができます。職場に知られることもありません。

国民健康保険(自営業・無職)の場合、付加給付金はありますか?

残念ながら、国民健康保険には付加給付金制度は原則ありません。ただし、自立支援医療(1割負担)と高額療養費制度(月の医療費が一定額を超えたら払い戻しを受けられる制度)を組み合わせることで医療費の軽減は可能です。また、一部の市区町村では独自の医療費助成制度を設けている場合があるため、市区町村の窓口に確認してみることをおすすめします。

自立支援医療の更新を忘れたらどうなりますか?

有効期限が切れると1割負担の適用が終了し、通常の3割負担に戻ります。受給者証には有効期限が記載されているため、期限の2〜3か月前には更新手続きを始めることをおすすめします。更新時も診断書の提出が必要です。

付加給付金は自動で振り込まれますか?申請が必要ですか?

健康保険組合によって異なります。自動的に計算・振り込まれる組合もあれば、レシートや領収書を添付して申請が必要な組合もあります。まず職場の担当者か健康保険組合に「付加給付の申請方法」を確認してください。

📝 まとめ|制度を知って医療費の不安を減らそう

この記事のまとめ

  • 脳腫瘍術後の抗てんかん薬は、発作がなくても予防目的で処方されることがある
  • 自立支援医療(精神通院医療)を使うと薬代・外来費が3割→1割に軽減される
  • 社会保険加入なら付加給付金との組み合わせで自己負担をさらに圧縮できる
  • ZUN自身も年間100万円超→約30万円に圧縮できた実績あり
  • まず「病院のMSW」か「職場の総務担当」に一声かけるだけでOK

制度を知らないだけで損をしている方がたくさんいます。「聞くのが恥ずかしい」「大げさかな」と思わなくて大丈夫。これはあなたが当然受け取れる権利です。一歩踏み出してみてください。

📚 参考文献・参考資料

  1. 厚生労働省「自立支援医療制度の概要」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jiritsu/index.html
  2. 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」. https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「社会保障制度・経済的支援」. https://ganjoho.jp/public/institution/backup/index.html
  4. 日本てんかん学会「てんかんについて(患者さん向け情報)」. https://square.umin.ac.jp/jes/
  5. SURVIVORSHIP.JP「がんと経済的支援」. https://survivorship.jp/cancer-pharmacotherapy/cost/
  6. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費制度について」. https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/
  7. Beghi E, et al. “Recommendation for a definition of acute symptomatic seizure.” Epilepsia. 2010;51(4):671-675. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19732133/
  8. Englot DJ, et al. “Seizures and epilepsy in patients with brain tumors.” Neurosurgical Focus. 2015;38(1):E1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25552280/
  9. 国立精神・神経医療研究センター「てんかんの治療」. https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease29.html
  10. 日本脳腫瘍学会「脳腫瘍診療ガイドライン 2024年版」. 金原出版. 2024.
  11. 厚生労働省「障害者総合支援法における自立支援医療制度」. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000172197.pdf
  12. 健康保険組合連合会「高額療養費制度と付加給付」. https://www.kenporen.com/
⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と公的情報をもとに作成した情報提供記事です。制度の適用条件・手続き・給付額は自治体・加入保険によって異なります。必ず主治医・MSW・職場担当者にご確認ください。
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ZUN
🩺 理学療法士|脳腫瘍サバイバー|長野県在住 2016年に理学療法士の国家資格を取得し、総合病院の急性期病棟で 脳卒中・整形外科リハビリを担当(糖尿病療養指導士/呼吸器リハ研修・がんリハ研修修了)。 2024年、悪性星細胞腫グレード3を発症。手術・放射線・化学療法を経て 現役で職場復帰。「医療者の知識」と「患者の実体験」の両方から、 脳腫瘍患者さんとご家族の力になる情報を発信しています。 詳細プロフィールは👇https://zunsyuyotaiken.com/profile/