⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。気になる症状がある場合は必ず医師にご相談ください。
👁️「視野の片側が見えにくい」「光が点滅する」「物にぶつかる」
それは後頭葉からのSOSかもしれません

後頭葉(こうとうよう)は頭の後部に位置し、視覚情報の処理を専門に担う部位です。ここに腫瘍ができると、視力は正常なのに「見え方」に異変が生じるという特徴的な症状が現れます。

このページでわかること:

  • 後頭葉腫瘍が日常生活に与える具体的な視覚症状
  • 眼科疾患・片頭痛の閃輝暗点との見分け方
  • PT(理学療法士)ZUN自身の視点からの解説
  • どんな症状のときに、どこに受診すべきか
🧩 後頭葉とはどこ?何をしている場所?

後頭葉は脳の一番後ろ(後頭部)に位置し、視覚処理の一次中枢と高次視覚処理(物体認識・色・動き)を担います。

👁️
一次視覚野(V1)
網膜からの視覚信号を最初に受け取る。障害→同名半盲(視野欠損)
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視覚連合野(V2〜V5)
色・形・動き・奥行きの認識。障害→視覚失認・色覚異常
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背側視覚路(Where pathway)
物の位置・動きの処理。頭頂葉へつながる
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腹側視覚路(What pathway)
物体・顔・文字の同定。側頭葉へつながる
⚠️ 後頭葉腫瘍の視覚症状は眼科では異常が見つかりにくいことが特徴です。「眼科で異常なしと言われたが、視野が欠けている感じがする」という場合は、脳神経科でのMRI検査が必要です。
📋 日常生活チェックリスト:こんなことありませんか?

以下の項目は後頭葉の機能低下が日常生活に現れるサインです。複数当てはまる場合は早めに専門医へご相談ください。

👁️ ① 視野の変化(最重要サイン)
  • 要注意視野の右半分または左半分が欠けている感じがする(同名半盲:homonymous hemianopia)
  • 要注意左右どちらかに物がある(人が立っている)のにぶつかってしまう
  • 要注意運転中、左(または右)から来る車・歩行者を見落とすようになった
  • 注意文章を読むとき、行の終わり(または初め)の文字が見えない・消えてしまう
  • 注意視野の特定の部分が薄く見える・かすむ(部分的視野欠損)
💡 同名半盲とは両眼の同じ側(右か左)の視野が欠ける状態。眼自体は正常で、視力検査でも異常は出ません。患者さん自身は気づきにくく、「最近ぶつかることが増えた」という形で周囲が先に気づくことが多いです。
✨ ② 閃輝・光の異常体験
  • 要注意視野の一部にギラギラ・チカチカする光が現れる(閃輝:phosphene)を繰り返す
  • 注意暗い部屋でも光の点・線・幾何学模様が見える(単純視覚幻覚)
  • 注意視野の一方に暗い影・黒い斑点が漂っている感じ
  • 確認光がやたら眩しく感じる(羞明:photophobia)が続く
⚠️ 閃輝は片頭痛の「閃輝暗点」と似ていますが、脳腫瘍の閃輝は頭痛を伴わないことが多く、繰り返し出現し、治まらないという点が異なります。
🎭 ③ 視覚認識の変化(高次視覚障害)
  • 要注意よく知っている人の顔がわからなくなった(相貌失認:prosopagnosia)
  • 注意物を見てもそれが何かわからない・見えているのに識別できない(視覚失認)
  • 注意色の認識がおかしい・同じ色に見えるものが増えた(色覚変化)
  • 注意物が動いているように見える・または止まっているのに動いて見える(動体知覚異常)
  • 確認文字は読めるのに「絵・図形」の意味がわかりにくくなった
🔀 ④ 複視・眼球運動の変化
  • 要注意物が二重に見える(複視)が新たに出現した
  • 注意眼球を動かすと視界がぶれる・揺れる感じ
  • 確認焦点が合いにくい・ピントが定まらない感じが続く
⚡ ⑤ 視覚性てんかん発作
  • 要注意突然、視野にカラフルな光や幾何学模様が広がる発作が繰り返す(視覚性焦点発作)
  • 注意発作後に一時的に目が見えなくなる(発作後盲)
  • 確認まぶたがピクピクする不随意運動を繰り返す
💡 後頭葉のてんかん発作は「視覚のフラッシュ」から始まり、その後に意識の変容が起こることがあります。片頭痛の視覚前兆との鑑別が重要です。
🔴 「視野欠損」「閃輝の繰り返し」「相貌失認」のいずれかが当てはまる場合は、眼科受診後に異常なしと言われても脳神経外科・脳神経内科でMRI検査を受けてください。
🔍 眼科疾患・片頭痛・脳卒中との見分け方
比較ポイント後頭葉腫瘍片頭痛(閃輝暗点)網膜剥離・眼科疾患
視野欠損片側の視野が持続的に欠損(両眼同側)一時的(20〜30分で消える)・ジグザグ模様片眼だけ(もう一方を閉じると消える)
頭痛との関係朝の頭痛を伴うことあり・閃輝と頭痛は別々閃輝の後に拍動性頭痛が続く頭痛なし
症状の経過数週間〜数ヶ月で進行性に悪化繰り返すが毎回回復する悪化するが進行パターンが異なる
眼科検査眼底・視力正常(異常なし)正常眼底検査で異常あり
MRI/CT後頭葉に腫瘍として描出正常(または軽微な変化)脳は正常
両眼性か片眼性か両眼の同じ側(同名半盲)両眼(広がるように)片眼のみ
⚠️ 重要:「眼科で異常なし」でも視野に問題があるなら脳を疑う。後頭葉の病変は眼球・視神経には影響を与えないため、眼科的には正常と診断されます。視野障害は視野計(perimetry)で検査できますが、簡易的には「片方の目を閉じて視野欠損が変わるか」を確認します(片眼で消えれば眼科疾患、両眼で同じなら脳の病変)。
🏥 いつ受診すればいい?受診の目安
緊急度症状対応
🔴突然の視野消失・失明 / 突然の強烈な頭痛+視覚症状すぐに119番!脳卒中・くも膜下出血の疑い
🟠数日以内に出現した視野欠損 / 繰り返す閃輝(頭痛を伴わない)当日〜翌日に脳神経外科受診
🟡片側の見え方がおかしい・相貌失認・視覚失認が数週間続く1週間以内に脳神経内科または脳神経外科受診
🔵眼科受診で異常なし・それでも見え方に違和感が続く脳神経科でMRI検査を受ける
🌿 ZUNの視点:視覚の問題は「眼科」だけで終わらせない
👁️ 「眼科で異常なし」は脳の問題を否定しない

PT(理学療法士)として脳疾患患者さんのリハビリに関わる中で、「眼科を何度も受診したが異常なしと言われ、最終的に脳のMRIで後頭葉腫瘍が見つかった」というケースを聞いたことがあります。

後頭葉の腫瘍による視野欠損は「両眼の同じ側が見えない」という特徴があります。これは眼球や視神経の問題ではなく、脳での視覚処理の問題なので、眼科での検査では引っかからないことが多いのです。

リハビリの現場では、半側空間無視と視野欠損は異なりますが、どちらも「見えているはずの空間に気づかない」という形で現れます。もし「ぶつかることが増えた」「運転中に見落としが増えた」と感じたら、必ず脳のMRIを受けてください。

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📖 参考文献・エビデンス
  1. 国立がん研究センター「脳腫瘍(原発性)」ganjoho.jp(2024年参照)
  2. Mayo Clinic. “Brain tumor – Symptoms and causes.” mayoclinic.org (2024)
  3. Zeki S. “A Vision of the Brain.” Blackwell Scientific, 1993. — 高次視覚野の機能分類
  4. MSDマニュアル「視野欠損・同名半盲」msdmanuals.com(2024年参照)
  5. 日本神経眼科学会「神経眼科疾患の診断と治療」neuro-ophthalmology.jp(2024年参照)
  6. Panayiotopoulos CP. “Visual phenomena and headache in occipital epilepsy.” Headache. 1999;39(6):444-452.
  7. Walsh & Hoyt. “Clinical Neuro-ophthalmology.” Lippincott Williams & Wilkins, 2005.
  8. 日本脳神経外科学会「脳腫瘍の症状と診断」jns.umin.ac.jp(2024年参照)
  9. Kanwisher N, et al. “The fusiform face area: a module in human extrastriate cortex specialized for face perception.” J Neurosci. 1997;17(11):4302-4311. — 相貌失認の神経基盤
  10. SURVIVORSHIP.JP「脳腫瘍経験者の生活支援情報」survivorship.jp(2024年参照)
⚠️ 本記事は医療行為・診断を行うものではありません。症状は個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。気になる症状がある場合は必ず脳神経外科・脳神経内科を受診してください。記事内の情報は執筆時点(2024年)のものです。