「子供は2〜3人欲しいね」――結婚前から夫婦で描いていた賑やかな家庭の風景。しかし、2024年、私たちは二人とも病を抱える身となっていました。脳腫瘍の治療開始まで、残された猶予はわずか10日。この絶望的な状況下で、それでも未来の家族の可能性を諦めないと決めた、私たちの生殖医療への挑戦の記録です。

夫婦二人で病を抱えて。葛藤の末の決断

私たち夫婦にはすでに娘が一人いますが、実は妻も娘の出産直前から原因不明の病を抱えていました。夫婦揃って「病気の保持者」となった今、新しい命を望むことは正しいのか。自分たちの体調や将来を考え、何度も自問自答しました。

しかし、「賑やかな家族」という夢をどうしても捨て去ることはできませんでした。娘に“きょうだい”を作ってあげたい。その一心で、私たちは生殖医療への挑戦を決意しました。

迫る治療開始。10日間で駆け抜けた「妊孕性温存」

私は以前、高校生で骨肉腫に罹患した患者さんを担当したことがありました。その時に「妊孕性(にんようせい)温存」の存在を知り、私も適用されるのでは?と思いチャレンジ。

病理診断が出てから、抗がん剤・放射線治療が始まるまでの期間はわずか10日ほど。立ち止まっている暇はありませんでした。急いで妊孕性温存ができる大学病院へ連絡を取り、脳腫瘍の主治医と生殖医療センターの専門医を繋いでもらいました。

一刻を争うスケジュールでしたが、医療従事者の方々の連携のおかげで、治療が始まるギリギリのタイミングで準備を整えられました。

「未来へ種を蒔く」全集中と、10本の希望

大学病院の個室。体調は決して万全ではありませんでしたが、私は「未来へ種を蒔くこと」に全集中。

結果、10本の精子凍結保存に成功。この「10本」という数字は、単なる医療データではなく、私たち家族の未来への切符のように感じられました。「いつか娘に”きょうだい”を…。」その準備が整ったことに、心の底から安堵しました。

自費診療の壁を支えた「補助金制度」の存在

生殖医療は基本的に自費診療であり、経済的な負担は小さくありません。しかし、調べていくうちに「小児・若年がん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」といった公的な助成金制度があることを知りました。

こうした支援があることは、治療費がかさむ闘病生活において大きな救いとなりました。制度をフルに活用しながら、私たちは「病気」だけでなく「未来」にも投資することができたのです。

事業内容詳細は↓

厚生労働省:小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業