第8話:治療の副作用。知識だけでは抗えない「体の変化」

💇♂️ さらば、マイヘアー
放射線の副作用といえば、やはり脱毛です。最初は「これくらいなら大丈夫」と思っていましたが、照射が強かった右前から耳上にかけて、みるみる髪が去っていきました。
しばらくすると、頭頂部と後頭部だけが残る無惨な姿に、私は大きな決断を迫られました。額が広く坊主は似合わないと避けてきましたが、「このままよりはマシだ」と人生2度目の丸坊主を決意。テモダールの6コース目あたりでようやく落ち着き、1年半かけて元の長さに戻るまでの、長い戦いの始まりでした。
🩸 血液データの変動、テモダール増量と28日間の休薬
テモダール(抗がん剤)の維持療法に入り、2クール目から投与量を増やしたところ、白血球と血小板が急激に減少しました。
「このまま治療を続けられるのか?」という不安の中、28日間の休薬期間を設け、採血。休薬のおかげで血球値は回復。結局、3クール目からは初期投与量と同じ量で継続することになりました。血液検査の数値一つに一喜一憂する、がん治療の厳しさを肌で感じた瞬間でした。
📅 仕事と治療の両立、副作用の波と戦う一週間のルーティン
職場復帰を果たしていた私は、仕事と治療のスケジュール管理に苦心しました。水曜日に診察を受け、木・金は副作用が軽いため出勤。しかし、服用3日目(金曜日)の昼を過ぎたあたりから、徐々に消化器症状(猛烈な便秘、吐き気、倦怠感)が全身を襲います。
土・日・月の3日間は、ひたすら消化器症状に苦しむ時間。カレンダーと睨めっこしながら、体調の波を予測して「耐える」日々を過ごしました。
🏃♂️ 学んだ知識を活かして、吐き気止めと「有酸素運動」による克服
この辛い消化器症状を乗り切るために、私は自分なりの対策を講じました。メトクラプラミド(吐き気止め)を適切に使用するのはもちろん、意外な特効薬となったのが「有酸素運動」です。
「身体が重いときこそ、あえて少し汗ばむ程度の運動をする」。これが驚くほど効果的でした。リハビリ職としての知識を自分の体で証明するように、運動の力を借りて副作用の波をやり過ごしていきました。
🩺 PT(理学療法士)として、振り返って思うこと
「副作用は遅れてやってくる」——がんリハビリ講習会で学んだ言葉です。知識として完全に理解していたはずなのに、自分の髪が排水溝に大量に流れていくのを見た瞬間、「知っている」と「経験する」の間にある巨大な溝を実感しました。
脱毛は、外見の変化以上に「治療が体を変えている」という現実を毎日突きつけてくる副作用です。鏡を見るたびに、目をそらしたくなる日もありました。だからこそ、リハビリ室で脱毛中の患者さんと話すとき、「髪のことには触れない」のではなく、「いつでも話していい」という空気を作ることを意識するようになりました。
そして、私が今、副作用に悩む患者さんに最も伝えたいのは「有酸素運動」の力です。「だるい時に動くなんて無理」と思われがちですが、身体を動かすと逆に倦怠感が軽くなる——これはPTとしての教科書知識ではなく、自分の身体で何度も実証した事実です。激しい運動ではなく、「少し汗ばむ程度の散歩」で十分。私はテモダール服用後の倦怠感を、家庭菜園で何度も乗り越えました。
仕事との両立については、「カレンダーと体調の波を一致させる」戦略が決定打でした。水曜診察→3日目から悪化→月曜まで耐える→火曜には回復——このパターンを読み切ることで、無理のない出勤計画が立てられました。リハビリ職に限らず、「副作用の波を見える化する」ことは、仕事を続けたいすべての患者さんに有効な工夫だと思います。











