第1話:てんかん発作で救急搬送

🌙 日常からの急転直下
結婚して5周年を迎えた PM 11:00。
いつものように夕食の片付けを終え、キッチンでお笑い番組を見ていました。 そろそろ寝るかと思い、お気に入りの「人をダメにするクッション」に身を預けた。 片手にはハイボール、テレビの中ではお笑い芸人が場を盛り上げている。そんなごく普通の夜。
どこにでもある平和な夜の風景が、私の記憶にある健常人最後の「日常」となりました。
🚨 空白の時間と、目の前の救急隊員
次に目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは天井ではなく、救急隊員の顔でした。
「……え、なんで救急隊がここに?」
意識がまどろみ、現実がうまく飲み込めませんでした。呆然とする私に、隣にいた妻が切迫した声で教えてくれました。
「あなた、てんかん発作で倒れたんだよ!」
😨 自分の知らない「自分」の姿
妻の話によると、異変は隣の寝室まで響く「ガタガタッ」という激しい音から始まったそうです。
駆けつけた妻が目にしたのは、激しく体を震わせる強直性発作(きょうちょくせいほっさ)を起こしている私の姿。さらに恐ろしいことに、発作が収まった後も意識が戻らぬまま、泥酔者のように支離滅裂なことを言いながら部屋を徘徊していたというのです。
本人の記憶は一秒たりとも残っていないのに、身体だけが勝手に動いていた。その事実に、後から深い衝撃と恐怖を感じました。
🚑 人生初の救急車、硬いタンカーと人の温もり
そのまま人生で初めて、タンカーに揺られて救急車へと運び込まれました。
背中に伝わるタンカーの感触は驚くほど硬く、無機質です。しかし、そんな不安を打ち消してくれたのは、救急隊の方々の優しさでした。
「大丈夫ですよ」「今から病院に向かいますからね」
車内の設備を眺めながら交わした何気ない会話が、混乱していた私の心を温かく包み込んでくれました。こうして私は、救急救命センターに向かい、予期せぬ事態へと足を踏み出していったのです。
🩺 PT(理学療法士)として、振り返って思うこと
理学療法士として、私はこれまで何百人もの患者さんを担当させていただきました。骨折で動けない方、脳卒中で意識のない方、術後で痛みに耐える方——どんな方にも、声をかけ、安心してもらおうと努めてきたつもりでした。
でも、自分が担架の上に乗る側になって、初めて気づいたことがあります。
担架の背中は、想像していたよりもずっと硬くて冷たい。装具に体を固定された瞬間、「自分の身体が宙に浮いているような。」あの不安感。そして何より——救急隊員の「大丈夫ですよ」のひと言が、こんなにも心に染みるものだったのか、と。
普段、私たちリハビリ職が患者さんに何気なくかけている言葉は、その人の人生で一番不安な瞬間に届いているのかもしれません。今、現場に戻った私は、声のかけ方ひとつにも、以前より重みを感じています。











