「視野の一部が欠けて見える」「物が二重に見える」「人の顔がわからない」
これらは後頭葉のはたらきと関係していることがあります。
後頭葉は目から入った情報を「意味のある映像」に変換する視覚の中枢です。
  • この記事でわかること:後頭葉の位置と構造
  • 視覚情報を処理する仕組み(一次視覚野と視覚連合野)
  • ダメージを受けたときに起きやすい症状
  • PT・サバイバー視点での体験と日常生活への影響
  • 機能回復の可能性とリハビリの考え方

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ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

🧠 後頭葉はどこにある?位置と構造

後頭葉は大脳の最も後ろ、頭の後頭部にあたる部分に位置しています。4つの脳葉(前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉)のなかでは最も小さく、目の真後ろにあると考えるとイメージしやすいでしょう。
後頭葉は大きく分けて「一次視覚野」「視覚連合野」の2つの領域から構成され、目から届いた光の信号を、段階的に「意味のある映像」へと変換していきます。

一次視覚野(V1)
primary visual cortex
目から届いた光の情報を最初に受け取る場所。形・コントラスト・動きの基本的な特徴を検出する。
視覚連合野
visual association cortex
一次視覚野からの情報をさらに処理し、色・顔・動き・物体の認識など、より複雑な視覚情報を統合する。

視覚情報はここから2つの経路で次の領域へ送られます。
背側経路(頭頂葉へ):「それがどこにあるか」を処理
腹側経路(側頭葉へ):「それが何であるか」を処理
後頭葉に脳腫瘍や脳卒中などの病変ができると、これらの「視覚の入り口」が影響を受け、本人が気づかないうちに視野の一部が欠けていることが少なくありません。

👁️ 後頭葉の主な役割

👁️
形・色・動きを認識
目から入った光の情報を受け取り、形・色・動きとして処理する。脳の「映像変換センター」。
👤
顔・物体の認識
見たものが何であるかを判断する。「あの人は誰か」「これは何か」を認識する。
📏
距離・奥行き・大きさの評価
物との距離感や大きさを判断。立体的な空間把握にも関わる。
🎞️
視覚的な記憶
見た情報を記憶として保存。「見たことがある」という視覚認識にも関わる。
🔗
頭頂葉・側頭葉との連携
視覚情報は後頭葉から頭頂葉(空間認識)と側頭葉(意味理解)に送られてさらに処理される。
🏃
動きの認識と運動との連動
動いているものを追いかける、視覚情報に応じて体を動かすための連携。

⚠️ 後頭葉にダメージがあると起きやすい症状

こんな症状が現れることがあります
  • 視野の一部が欠ける(同名半盲:左後頭葉なら右視野、右後頭葉なら左視野が見えにくい)
  • 見えているのに何かわからない(視覚失認)
  • 知っているはずの顔が誰かわからない(相貌失認)
  • 光の点・線・色などが見える幻視
  • 距離感がつかめない・物に手が届かない・ぶつかる
  • 文字が読めなくなる(純粋失読:書くことはできるが読めない)

🩺 PT・サバイバー視点:後頭葉病変のリアル

🩺 理学療法士として、そして当事者として

リハビリ職として、私は 後頭葉の脳卒中後 の患者さんを多く担当してきました。最も多い症状は 「同名半盲(どうめいはんもう)」——左右どちらかの視野の半分が欠ける状態です。

驚くべきことに、本人は「視野が欠けている」と自覚していないケースがほとんど。「いつもどおり見えている」と話すのに、左側のものに気づかず壁にぶつかる、左側の人に話しかけられても反応できない——そんな患者さんを何人も担当しました。「見えていないことに、見えていない」——これが後頭葉障害の最も難しい部分です。

私自身は右前頭葉の腫瘍でしたが、術前のMRIで「腫瘍が後方に広がっていないか」「後頭葉に影響がないか」を慎重に確認されました。「視覚が損なわれたら、PTの仕事に戻れない」——その恐怖は今でも忘れられません。視覚は、リハビリ職にとっても患者さんにとっても、生活と仕事の基盤になっています。

🏠 日常生活への影響と工夫

こんな場面で「あれ?」と感じることがあります
  • 歩行・移動:欠けている側の物・人にぶつかる/階段の段差が見えにくい
  • 食事:お皿の半分を残してしまう(半側無視と合併すると顕著)
  • 読書・新聞:行の途中で読みが止まる/文字が読み取りにくい
  • 家族・友人:知っている顔が分からなくなる(相貌失認)
  • テレビ・スマホ:画面の一部が見えない/映像の認識が遅れる
  • 運転:視野欠損があると運転は禁忌。必ず眼科・神経内科で評価を

💡 工夫のヒント「欠けている側を意識的に見る」訓練を習慣化/本・新聞は 欠けている側に赤い線 を引いて気づきを補う/家族には「見えている側から声をかけてもらう」/部屋の照明を明るくし、コントラストを強める。環境の工夫が、視覚補正の半分を担います。

💪 機能回復の可能性とリハビリの考え方

💪 視覚も「使うことで再構築される」

後頭葉のダメージによる視野欠損や視覚失認は、神経可塑性(しんけいかそせい) によりリハビリで部分的な改善が見込まれます。完全に元に戻ることは難しいケースもありますが、残された視覚機能を最大限に活かす訓練で生活の質は大きく向上します。

具体的なリハビリの方向性:
① 視野訓練(Visual Scanning Training):欠けている側を意識的に見る練習。鉛筆で文字を追う、点滅する光を目で追う等
② プリズムメガネ:眼科・リハビリ科で処方される視野補正ツール
③ 環境調整:物の配置を一定にする、明るさ・コントラストを強める
④ 顔・物の認識訓練(視覚失認・相貌失認):写真カードでの反復学習

大切なのは 「眼科・神経内科・リハビリ科の連携」。視覚の問題は単独で対応するのではなく、専門チームでの評価と訓練 が回復への近道です。神経可塑性の仕組み も参考になります。

🚨 こんな時はすぐに受診を

🚨 早めの受診が必要なサイン
  • 急に視野が欠けた・見えない場所ができた(脳卒中の可能性)
  • 突然、物が二重に見える・歪んで見える
  • 強い頭痛と一緒に視覚の異常が起きた
  • 光の点滅・幻視・知らない映像が見える(てんかん発作の可能性)
  • 家族から見て「片側の物に気づかない様子」が続く

📝 まとめ

後頭葉について知っておきたいこと
  • 後頭葉は大脳の最後部にある、視覚情報を処理する「映像変換センター」
  • 一次視覚野と視覚連合野の2つの領域からなる
  • 形・色・動き・顔・物の認識すべてに関わる
  • 視覚情報は背側経路(頭頂葉)と腹側経路(側頭葉)へ送られて処理される
  • ダメージでは視野欠損・視覚失認・相貌失認・幻視が起きやすい
  • 「見えていないことに、見えていない」場合が多く、家族の気づきが重要
  • 神経可塑性により、視野訓練と環境調整で生活の質を上げられる

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参考文献
  1. MSDマニュアル家庭版.「部位別にみた脳の機能障害」. msdmanuals.com
  2. Johns Hopkins Medicine. “Brain Anatomy and How the Brain Works.” hopkinsmedicine.org
  3. NINDS. “Brain Basics: Know Your Brain.” ninds.nih.gov
  4. Kolb B, et al. “Neuroanatomy, Cerebral Cortex.” StatPearls. NCBI. NBK537247
  5. Afifi AK. “Anatomy, Central Nervous System.” StatPearls. NCBI. NBK542179
  6. Kleim JA, Jones TA. “Principles of experience-dependent neural plasticity: implications for rehabilitation after brain damage.” J Speech Lang Hear Res. 2008. PMID:18230848
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「脳腫瘍(成人)」. ganjoho.jp
⚠️本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。気になる症状がある場合は必ず担当の脳神経外科医・神経内科医・眼科医にご相談ください。緊急性のある症状(急な視野欠損・強い頭痛・意識障害)は速やかに医療機関を受診してください。