「物の位置がつかめない」「体の感覚が変」「服の左半分だけ着忘れる」
これらは頭頂葉のはたらきと関係していることがあります。
頭頂葉は感覚・空間認識・身体イメージを統合する「総合処理センター」です。
  • この記事でわかること:頭頂葉の位置と構造
  • 感覚・空間認識・身体イメージのはたらき
  • ダメージを受けたときに起きやすい症状
  • PT・サバイバー視点での体験と日常生活への影響
  • 機能回復の可能性とリハビリの考え方

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ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

🧠 頭頂葉はどこにある?位置と構造

頭頂葉は頭の真上、頭頂部に位置する脳葉で、前頭葉の後ろ・後頭葉の前・側頭葉の上にあります。手のひらを頭の上に乗せたあたりが、ちょうど頭頂葉の位置です。
頭頂葉は大きく分けて「一次体性感覚野」「上頭頂小葉」「下頭頂小葉」の3つの領域に分かれており、それぞれが異なる役割を担っています。

一次体性感覚野
primary somatosensory cortex
中心溝のすぐ後ろにある領域。全身の触覚・痛覚・温度感覚などの情報を最初に受け取る。
上頭頂小葉
superior parietal
空間認識・物の位置や距離の把握・視覚と運動を結びつける機能を担う。
下頭頂小葉
inferior parietal
縁上回・角回を含む。特に左側は計算・書字・言語理解に関わる。

左右の頭頂葉ははたらきが少し異なり、左頭頂葉は計算や書字・言語の処理に、右頭頂葉は空間認識や注意の機能により強く関わっています。脳腫瘍や脳卒中で頭頂葉に病変ができた場合、どちら側か・どの領域かによって出現する症状が大きく変わります。

🖐️ 頭頂葉の主な役割

触覚・痛み・体の位置感覚
全身の皮膚や関節からの感覚情報を受け取り、何が触れているか・どこが痛いかを認識する。
📐
空間認識
物との距離・位置関係・左右の把握。「どこに何があるか」を理解する。
🧍
身体イメージ
自分の体がどのような状態にあるかを把握する(体の地図を持つ)。
🔗
感覚情報の統合
視覚・触覚・固有感覚(体の位置感覚)など、複数の感覚を組み合わせて処理する。
✍️
計算・書字(左頭頂葉)
左頭頂葉は数字の計算や文字を書く機能にも関わる(角回・縁上回)。
👁️
視覚情報の処理支援
後頭葉から来た視覚情報を空間的に処理。物の形・位置を立体的に理解。

⚠️ 頭頂葉にダメージがあると起きやすい症状

こんな症状が現れることがあります
  • 体の片側の感覚がなくなる・しびれる(体性感覚障害)
  • 空間を正しく認識できない(道に迷う・距離感がずれる)
  • 片方の空間を無視してしまう(半側空間無視)
  • 物の位置関係や地図の理解が難しくなる
  • 計算ができなくなる・文字が書けなくなる(ゲルストマン症候群)
  • 体の一部がなくなったように感じる・片側を着替えない
  • 箸やボタンなど細かい動作が難しくなる(感覚と運動の連携の問題)

🩺 PT・サバイバー視点:頭頂葉病変のリアル

🩺 理学療法士として、そして当事者として

リハビリ職として、私は頭頂葉にダメージを受けた患者さんを多く担当してきました。特に脳卒中後の 「半側空間無視(はんそくくうかんむし)」 の患者さんが印象的です。食事をしても お皿の左半分だけ残す、着替えで 左袖を通し忘れる、車椅子で 左の壁にぶつかる——本人にはまったく自覚がないことが多く、ご家族から見ると「なぜ気づかないの?」と戸惑われるケースが少なくありません。

また、感覚障害(触覚・痛覚・体の位置感覚の低下)は 「目に見えない後遺症」 の代表格です。歩けるようになっても、「足の裏の感覚がない」 と転倒リスクが高まる。指先の感覚が鈍ると、ボタン・チャック・お箸 が難しくなる——日常の細かな動作すべてに影響します。

私自身は右前頭葉の腫瘍でしたが、術後の感覚評価では「頭頂葉まで影響が及んでいないか」を慎重に確認されました。感覚と運動は二人三脚——どちらが欠けても、思うように動けなくなることを、当事者として改めて実感しました。

🏠 日常生活への影響と工夫

こんな場面で「あれ?」と感じることがあります
  • 食事:お皿の片側を残してしまう/箸の使い方がぎこちない
  • 着替え:服の左右が分からない/片袖を通し忘れる
  • 移動:道に迷いやすい/物にぶつかる/距離感がずれる
  • 細かい作業:指先の感覚が鈍くボタンが留めづらい/字が崩れる
  • 計算・お金の管理:簡単な計算ができない(左頭頂葉)
  • 体の感覚:手足が「自分のものでない」ような違和感

💡 工夫のヒント「視覚で補う」——鏡で確認・色テープで目印・配置を固定する/「ゆっくり確認」の動作を習慣にする/家族には 「左側にも声をかける・物を置く」 工夫をお願いする。「環境を整えること」が、感覚障害の最大のリハビリ補助になります。

💪 機能回復の可能性とリハビリの考え方

💪 神経可塑性は、感覚障害にも働きます

頭頂葉のダメージによる症状は、神経可塑性(しんけいかそせい) によりリハビリで改善が見込まれます。感覚や空間認識のリハビリは「意識して使い続けること」が最大の鍵。動かない時間が長いほど症状は固定化しやすく、逆に積極的に使えば回復のチャンスが広がります。

具体的なリハビリの方向性:
① 感覚刺激リハビリ:温冷刺激・触覚刺激(柔らかい/硬い)・指先のマッサージ
② 半側空間無視へのアプローチ:意識的に左側を見る訓練・声かけ・赤い線を引いて気づきを促す
③ 視覚と運動の統合:鏡療法(mirror therapy)・両手で同じ動作を反復
④ 計算・書字:簡単な計算ドリル・なぞり書きから少しずつ

大切なのは 「焦らず・諦めず」。感覚は数ヶ月単位でゆっくり戻ることが多く、本人もご家族も 「変化が小さい時期」 を乗り越える忍耐が必要です。神経可塑性の仕組み も参考になります。

🚨 こんな時はすぐに受診を

🚨 早めの受診が必要なサイン
  • 急に片側の感覚がなくなった・しびれた(脳卒中の可能性)
  • 急に物の位置や距離が分からなくなった
  • 突然、計算や書字ができなくなった
  • 強い頭痛と一緒に感覚や空間認識の問題が起きた
  • 家族から見て「片側の物を無視しているように見える」状態が続く

📝 まとめ

頭頂葉について知っておきたいこと
  • 頭頂葉は頭頂部にあり、感覚・空間認識・身体イメージを統合する「総合処理センター」
  • 一次体性感覚野・上頭頂小葉・下頭頂小葉の3つの領域からなる
  • 全身の感覚情報(触覚・痛み・体の位置)を受け取り処理する
  • 左頭頂葉は計算・書字、右頭頂葉は空間認識・注意に強く関わる
  • ダメージでは半側空間無視・感覚障害・計算困難などが起きやすい
  • 感覚障害は「目に見えない後遺症」——家族の理解と環境整備が回復を助ける
  • 神経可塑性により、リハビリで改善する可能性が十分にある

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参考文献
  1. MSDマニュアル家庭版.「部位別にみた脳の機能障害」. msdmanuals.com
  2. Johns Hopkins Medicine. “Brain Anatomy and How the Brain Works.” hopkinsmedicine.org
  3. NINDS. “Brain Basics: Know Your Brain.” ninds.nih.gov
  4. Kolb B, et al. “Neuroanatomy, Cerebral Cortex.” StatPearls. NCBI. NBK537247
  5. Afifi AK. “Anatomy, Central Nervous System.” StatPearls. NCBI. NBK542179
  6. Kleim JA, Jones TA. “Principles of experience-dependent neural plasticity: implications for rehabilitation after brain damage.” J Speech Lang Hear Res. 2008. PMID:18230848
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「脳腫瘍(成人)」. ganjoho.jp
⚠️本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。気になる症状がある場合は必ず担当の脳神経外科医・神経内科医にご相談ください。緊急性のある症状(急な麻痺・強い頭痛・意識障害・急な感覚消失)は速やかに医療機関を受診してください。