⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。運動を始める前に、必ず主治医・担当PTにご相談ください。

「筋トレが体にいいのはわかったけれど、何から始めればいい?」

そんなあなたのために、私が厳選した「効率よくマイオカインを分泌させる」ための5分間プログラムをご紹介します。特別な道具は一切不要。椅子が一脚あれば、今日からあなたの自宅が「天然の薬工場」に変わります!

📋 このページでわかること
  • マイオカインとは何か・がんサバイバーにとっての意義
  • 効率よく分泌させるための「3つの黄金ルール」
  • 自宅でできる自重トレーニング7種目(手順・目標・コツ)
  • がんサバイバーが知っておくべき安全チェックリスト
🧬 “魔法の薬マイオカイン”とは?
マイオカイン(Myokine)とは

筋肉が収縮することで分泌されるホルモン様の生理活性物質(サイトカイン)の総称です。代表的なものにIL-6・イリシン・BDNFがあり、以下の作用が研究で報告されています。

  • 抗炎症作用:慢性炎症を抑え、腫瘍微小環境を改善する可能性
  • 免疫機能のサポート:NK細胞・T細胞の活性化を促進
  • がん再発リスク低減の可能性:がん細胞の増殖・転移を抑制するエビデンスが蓄積中
  • 脳機能の向上:BDNFが神経新生を促し、認知機能・気分を改善
🤑 効率よく「貯筋」するための3つのルール
1
大きな筋肉から動かす
マイオカインは筋肉量に比例して分泌。「太もも」「お尻」など体の大きな筋肉を優先しましょう。
2
回数より「フォーム」
100回やる必要はありません。10回を丁寧に、筋肉の伸び縮みを意識して行うことが大切です。
3
呼吸を止めない
血圧の急上昇を防ぐため、「力を入れる時に吐く」を意識しましょう。息を止めるのは厳禁です。
🌅 マイオカインを呼び覚ます!自重トレ7選
椅子スクワット
主な筋肉:太もも(大腿四頭筋)・お尻(大臀筋)

「キング・オブ・エクササイズ」。最も効率よくマイオカインを分泌できる、このプログラムの主役種目です。

  • 1椅子に浅く座り、足を肩幅に広げます。
  • 2両手を前に伸ばし、お辞儀をするようにゆっくり立ち上がります。
  • 3お尻を後ろに引きながら、5秒かけてゆっくり座ります
🎯 目標:10回 × 2セット
💡 ワンポイント:膝とつま先が同じ方向に向くようにすると膝を痛めにくい。立ち上がる瞬間に息を吐きましょう👌
ヒップリフト
主な筋肉:お尻(大臀筋)・裏もも(ハムストリングス)

寝たままできる、骨盤周りの大きな筋肉を狙ったメニュー。術後でベッドから起き上がるのがつらい時期にも取り組みやすい種目です。

  • 1仰向けに寝て、膝を立てます。
  • 2お尻をギュッと締めながら、息を吐きつつゆっくりと腰を持ち上げます。
  • 3肩から膝が一直線になったら3秒キープ。ゆっくり下ろします。
🎯 目標:10回 × 2セット
💡 ワンポイント:体幹と太ももが一直線になるくらいまで挙げるとGood。腰を反りすぎないよう注意👌
壁プッシュアップ
主な筋肉:胸(大胸筋)・腕(上腕三頭筋)・肩(三角筋前部)

腕立て伏せが苦手な方でも、壁を使えば安全に上半身の筋肉を刺激できます。

  • 1壁に両手をつき、一歩後ろに下がります(手は肩幅、胸の高さ)。
  • 2肘を曲げながら息を吸い、胸を壁に近づけます。
  • 3息を吐きながら壁を強く押し返し、元の姿勢に戻ります。
🎯 目標:10回
💡 ワンポイント:肩甲骨の動きを意識すると胸・背中・腕とより多くの筋肉が動いてGood👌
かかと上げ(カーフレイズ)
主な筋肉:ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)

「第2の心臓」であるふくらはぎを動かし、全身の血流をポンプアップ。むくみ予防にも効果的です。

  • 1椅子の背もたれや壁に手を添えて立ちます。
  • 2息を吐きながらかかとをできるだけ高く上げ、1秒キープ。
  • 3息を吸いながら5秒かけてゆっくりおろします。
🎯 目標:20回
💡 ワンポイント:下ろす時に「かかとが床につくかつかないかくらい」で止めるとより効果的でGood👌
サイドレッグレイズ
主な筋肉:股関節外転筋(中臀筋・小臀筋)

ふらつきを予防し、歩行を安定させる中臀筋を鍛えます。転倒予防にも直結する重要な種目です。

  • 1横向きに寝て、下の膝を軽く曲げます。
  • 2上の脚を伸ばしたまま、息を吐きながら斜め後ろ方向へゆっくり持ち上げます。
  • 3お尻の横が使われているのを感じながら、ゆっくり下ろします。
🎯 目標:左右各10回
💡 ワンポイント:膝を伸ばして行うのが難しい方は、両膝を曲げて足の内側をつけたまま膝を大きく開く「クラムシェル」でもOK👌
ニートゥチェスト
主な筋肉:腸腰筋・腹筋群(体幹)

姿勢を整え、内臓の活性化も狙う体幹トレーニング。椅子に座ったまま行えます。

  • 1椅子に深く座り、両側の座面端を軽く持ちます。
  • 2息を吐きながら両膝を揃えたまま、胸に近づけるように引き上げます。
  • 3お腹に力を入れたまま、息を吸いながらゆっくり足を戻します。
🎯 目標:10回
💡 ワンポイント:お腹の圧が高まると血圧が上がりやすいため、必ず息を吐きながら脚を持ち上げましょう!息を止めると逆効果です。
ランジ
主な筋肉:下半身全体(大腿四頭筋・大臀筋・ハムストリングス)

バランス能力を高め、実用的な筋力(階段・坂道・歩行)を養います。7種目中もっとも難易度が高い種目です。

  • 1両手を腰に当て(または頭の後ろで組み)、片足を大きく前に踏み出します。
  • 2息を吸いながら前後の膝がそれぞれ約90度になるまで腰を落とします。
  • 3息を吐きながら前の足で地面を蹴って、元の位置に戻ります。
🎯 目標:左右交互に計10回
💡 ワンポイント:ふらつきやすい方は机や壁に捕まりながら行いましょう。膝とつま先を同じ方向に向けることもGood👌
✅ 安全のチェックリスト👷 ― こんな時は強度を落とすかお休みしましょう
  • 🔴 関節の痛み 膝・腰・股関節に「鋭い痛み」がある場合は可動域を小さくして行うか、その種目をスキップしてください。
  • 🔴 血小板・貧血 治療の影響で出血しやすい・ふらつきが強い時は、必ず負荷を下げて「椅子スクワット」「かかと上げ」など座位・臥位でできるものだけに絞ります。
  • 🔴 骨転移がある 荷重をかけてよい部位・負荷の範囲を必ず主治医に確認してから行いましょう。骨折リスクがあります。
  • 🟡 強い倦怠感 がん関連疲労(CRF)がある日は無理をしないでください。「今日は椅子スクワット5回だけ」でも十分です。
  • 🟡 運動後の確認 翌日に強い筋肉痛・関節痛・めまい・息切れが残る場合は、強度が高すぎるサインです。回数・セット数を減らしましょう。
ZUN体験談 脳腫瘍サバイバー × PT(理学療法士)の視点から

開頭手術から退院した直後、私は「早く職場復帰したい」という焦りから、筋トレとウォーキングを1時間やってしまいました。結果、その後より疲弊し、妻に怒られました(苦笑)。

PT(理学療法士)として「過負荷は禁物」と患者さんに伝えていた自分が、いざ当事者になると焦りで判断を誤ってしまったのです。

その経験から私が今お勧めしているのが、このプログラムです。「まず椅子スクワット10回だけ」という超低強度から始めること。「こんなので意味あるの?」と思われるかもしれませんが、PTとして断言します。筋肉が動けばマイオカインは出ます。量より継続が、がんサバイバーには何より大切です。

焦らず、自分のペースで続ける。それが回復への第一歩だと確信しています。

🧩 まとめ:筋肉は裏切らない。今日から自分への投資を!

5分間のトレーニングが終わった後、あなたの血液中には「マイオカイン」という名の薬が流れています。

最初は「スクワット10回だけ」でも構いません。その一歩が、1ヶ月後・1年後のあなたのQOLを確実に支えてくれます。

まずは今日、椅子から立ち上がる練習を1回だけ試してみてください。それがあなたの「天然の薬工場」の第一歩です。

📚 参考文献
  • American College of Sports Medicine. ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription, 11th ed. Wolters Kluwer; 2021. https://www.acsm.org/
  • Campbell KL, et al. “Exercise Guidelines for Cancer Survivors: Consensus Statement from International Multidisciplinary Roundtable.” Med Sci Sports Exerc. 2019;51(11):2375-2390. PMC8576825
  • Schmitz KH, et al. “American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors.” Med Sci Sports Exerc. 2010;42(7):1409-26. PubMed:20559064
  • 日本リハビリテーション医学会「がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版」2019年. https://www.jarm.or.jp/
  • Devin JL, et al. “Effects of Exercise-Induced Changes in Myokine Expression on Tumor Microenvironment.” Front Oncol. 2024. PMC11204211
  • Zhuang J, et al. “Role of myokines in regulating skeletal muscle mass and function in cancer cachexia.” Front Oncol. 2023. PMC10390289
  • Hojman P, et al. “Exercise-induced myokines protect against cancer.” Exerc Immunol Rev. 2021;27:43-53. PMC8566103
  • Hoffmann C, Weigert C. “Skeletal Muscle as an Endocrine Organ: The Role of Myokines in Exercise Adaptation and Cancer Biology.” Cold Spring Harb Perspect Med. 2022. PMC9024747
  • Fairey AS, et al. “Myokine Expression and Tumor-Suppressive Effect after 12-Week Exercise Intervention in Prostate Cancer.” Med Sci Sports Exerc. 2022. PMC8754092
  • Dethlefsen C, et al. “A single bout of resistance and HIIT exercise increases anti-cancer myokines in breast cancer survivors.” Front Physiol. 2025. PMC12259798
⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。運動プログラムを開始する前には必ず主治医・担当療法士にご相談ください。