⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。リハビリを始める前に必ず主治医またはリハビリ担当者にご相談ください。

「人の名前がなかなか出てこない…」
「話を聞いてもすぐ忘れてしまう」
「言いたいことが言葉にならない」
そんなもどかしさを感じていませんか?
脳はトレーニングで変わります。あきらめなくて大丈夫です。

脳には「神経可塑性(しんけいかそせい)」という、繰り返し使うことで回路を強化・再構築する力があります。側頭葉が担う記憶・言語・感情のリハビリは、毎日の積み重ねで少しずつ改善が期待できます。脳腫瘍術後・治療中の方でも、退院後の自宅で取り組めるシンプルな方法から始められるのが特徴です。

この記事では、PT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーのZUNが、患者さんとご家族が自宅で無理なく続けられる4つのリハビリを解説します。記憶(海馬)・言語(言語野)・聴覚理解・感情(大脳辺縁系)それぞれにアプローチする実践的な内容で、特別な道具は不要・1回5〜15分・疲れたらすぐ休んでOKという、続けやすさを最優先に設計しました。

  • こんな方に向いています:記憶が落ちた・言葉が出にくくなったと感じる方
  • こんな方にも:家族と一緒に取り組みたい方
  • 特別な道具は不要。今日から自宅ですぐ始められます
  • 1回5〜15分。疲れたらすぐ休んでOKです

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ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

🧬 リハビリで「脳は変わる」——神経可塑性のチカラ

🧠
脳は何歳からでも変われます

かつては「脳の細胞は減るだけ」と思われていましたが、現在では脳は繰り返し使うことで回路が強くなることがわかっています。これを「神経可塑性」といいます。記憶の練習を繰り返すと海馬が刺激され、言葉を出す練習をすると言語野の神経ネットワークが強化されます。「毎日少しずつ」が、何よりも大切なのです。

🧩 リハビリ①:記憶トレーニング(海馬へのアプローチ)

記憶トレーニング 海馬を使って「覚える・思い出す」回路を強化する
🧩 対象:「さっきのことを忘れる」「物の名前が思い出せない」

🗂️ 遅延再生練習(思い出すトレーニング)

「覚えること」より「少し後で思い出すこと」が海馬を強く刺激します。すぐに思い出せなくても、ゆっくり頑張ってみましょう。

📋 やり方

  1. 家族に関係のない3つの言葉を言ってもらう(例:「バナナ・消防車・鉛筆」)
  2. 5〜10分、別のことをする(テレビを見る・軽い体操など)
  3. さっきの3つの言葉を思い出して言う
  4. 慣れてきたら、言葉を4つ・5つに増やす
⏱️ 1回5分 / 1日1〜2回

📔 今日の日記・メモ習慣

長い文章を書く必要はありません。その日あったことを3行だけメモするだけでOKです。「書く→後で読み返す」の流れが記憶の定着を助けます。

📋 やり方

  1. 夜寝る前に、今日あったことを3つだけメモする
  2. 翌朝、昨日のメモを読み返す
  3. 家族に「昨日何があったっけ?」と聞いてもらうのも効果的
📝 夜5分 / 朝2分の習慣

🛒 買い物リスト記憶練習

実生活に結びついた記憶の練習は続けやすく、効果も感じやすいです。

📋 やり方

  1. 家族に「今日の買い物リスト3品」を言ってもらう(例:牛乳・卵・パン)
  2. 5分後に思い出して言う
  3. できたら品数を増やす
🛒 日常生活に組み込みやすい練習

🗣️ リハビリ②:言語・語想起トレーニング(言語野へのアプローチ)

言語・語想起トレーニング 「言葉が出てこない」「あれ・それが増えた」を改善する
🗣️ 対象:「言いたい言葉が出てこない」「あれ・それが多い」

🐘 カテゴリー言葉出し(語流暢性練習)

あるカテゴリーの言葉をたくさん思い出す練習です。側頭葉の言語野を広く刺激できます。焦らず、ゆっくり取り組みましょう。

📋 やり方

  1. タイマーを1分にセットする
  2. 「動物の名前」をできるだけ多く言う(または書く)
  3. 慣れたら「食べ物」「国の名前」「花の名前」などに変えてみる
  4. 家族と一緒に交互に言い合うのも楽しい練習になります
⏱️ 1回1〜2分 / 1日1〜2回

🔍 物の名前当て(呼称練習)

目の前の物の名前を素早く言う練習です。「あれ・それ」を減らして、正確な言葉を取り戻していきましょう。

📋 やり方

  1. 身近な物(時計・コップ・スプーンなど)を3〜5つ用意する
  2. 家族が1つずつ指さして「これは何?」と聞く
  3. 名前をすぐに答える
  4. すぐに出なくても焦らない。ヒントをもらいながらでもOK
⏱️ 1回5分 / 1日1〜2回

📖 音読・読み上げ練習

声に出して読むことで、言語野と聴覚野を同時に刺激できます。新聞・絵本・好きな本など、何でも構いません。

📋 やり方

  1. 好きな本や新聞の記事を選ぶ(短い文章でOK)
  2. ゆっくり声に出して読む(早さは関係ない)
  3. 読んだ後、内容を家族に一言で話してみる
⏱️ 1回5〜10分 / 毎日少しずつ

👂 リハビリ③:聴覚理解トレーニング(聴覚野へのアプローチ)

聴覚理解トレーニング 「聞こえているのに理解が遅れる」感覚を改善する
👂 対象:「話の意味がスッと入らない」「指示を聞いても混乱する」

📢 複雑な指示に従う練習

言葉で伝えられた指示を正確に実行する練習です。段階的に難しくすることで、聴覚理解を少しずつ高められます。

📋 やり方

  1. 【簡単】家族が1つの動作を言う(例:「立ち上がってください」)
  2. 【普通】2つの動作をつなげる(例:「右手を上げて、次に座ってください」)
  3. 【難しい】3つの動作を組み合わせる(例:「右手で左の耳を触ってから、立ち上がって、拍手してください」)
  4. できる難しさから始めてOK。できたら1段階上を目指す
⏱️ 1回5〜10分 / 1日1回

📺 テレビ・ラジオの内容を一言まとめ

聞いた情報を整理して言葉にする力を養います。ニュース・バラエティ・ドラマなど、好きな番組で楽しくできます。

📋 やり方

  1. テレビやラジオを2〜3分聞く(ニュース・天気予報など短い内容が◎)
  2. 聞き終わったら「今の話、何についてだったと思う?」と家族に聞いてもらう
  3. 一言でまとめて答える(長い文章でなくてOK)
⏱️ 1回5分 / 日常のながら練習でOK

❤️ リハビリ④:感情コントロールのトレーニング(大脳辺縁系へのアプローチ)

感情コントロールトレーニング 「理由なく不安・イライラ」を穏やかにしていく
❤️ 対象:「急に不安になる」「理由なくイライラする」

🌬️ 腹式呼吸・ゆったり呼吸法

ゆっくりとした深い呼吸は、扁桃体(感情を司る部分)の過剰な活動を落ち着かせる効果があることが研究で示されています。体への負担がほとんどなく、誰でもすぐに始められます。

📋 やり方(4-7-8呼吸法)

  1. 鼻から4秒かけてゆっくり息を吸う
  2. 7秒間、息を止める(苦しければ3〜5秒でOK)
  3. 口から8秒かけてゆっくり吐く
  4. これを3〜5回繰り返す。不安を感じたときにいつでもできます
⏱️ 1回2〜3分 / 不安を感じたときいつでも

📒 感情日記(気持ちの見える化)

「今日どんな気持ちだったか」を書き出すことで、感情のパターンに気づきやすくなります。家族との共有ツールとしても使えます。

📋 やり方

  1. 寝る前に「今日の気持ち」を1〜3つ書く(例:「なんとなく不安だった」「家族と話してほっとした」)
  2. 気持ちに点数をつけてみる(例:不安5点 / 穏やか3点)
  3. 週に一度、家族と一緒に読み返して傾向を確認する
📒 夜3〜5分 / 家族との会話のきっかけにも

🌿 マインドフルネス(今この瞬間に集中する)

「今、ここ」に意識を向ける練習です。難しく考えず、まず「今感じていること」を観察するだけでOKです。

📋 やり方(簡単な方法)

  1. 椅子に座って、目を閉じる(または手元を見る)
  2. 「今、体のどこかに力が入っていないか?」確認して、力を抜く
  3. 今聞こえている音、感じている温度を、ただ観察する(1〜2分)
  4. 「考えてしまっても大丈夫。また今に戻ってくればいい」
⏱️ 1回2〜5分 / 朝や気分転換に

💡 無理なく続けるための4つのコツ

  • ⏱️ 短くていい

    1回5〜10分で十分です。長くやるより毎日続けることが大切。

  • 👨‍👩‍👧 家族と一緒に

    一人でやると疲れます。家族がサポーターになると続けやすい。

  • 📅 時間を決める

    「朝食後」「夕食前」など習慣に組み込むと忘れにくい。

  • 🎉 できたら褒める

    小さな進歩を大切に。「昨日より1つ多く思い出せた!」でOK。

⚠️リハビリ中の注意点

  • 疲れたらすぐ中断してください。脳が疲れているときは無理は禁物です。
  • 症状が悪化した・新しい症状が出た場合は、すぐに主治医に相談してください。
  • 「できない」ことを責めないでください。できた部分に注目しましょう。
  • リハビリは医療チームの指導のもとで行うのが理想です。担当者への相談を忘れずに。
まだ受けていない方へ:側頭葉セルフチェックはこちら
🩺 ZUNの体験談|脳腫瘍サバイバー × PT

「セルフトレーニングを早期から伝えたかった」

私の友人は側頭葉の手術後も物の名前が出てこず、相手に思っていることを伝えられずもどかしさを感じていました。

今思えば、入院中のリハビリだけでなく、「セルフトレーニングをより早期から伝えていたら改善も早かったな」と思って後悔しています。

PTの立場から言うと、脳のリハビリで大切なのは「正確さ」より「継続」です。できなくてもいい。ゆっくりヒントを出してもらいながら取り組む時間そのものが、脳への刺激になっています。焦らず、家族と一緒に、楽しみながら続けてみてください。

❓ よくある質問(FAQ)

いつから始めればいいですか?

主治医・リハビリ担当者の許可が出てから始めるのが基本です。退院直後でも体調が安定していれば取り組めます。疲れやすい時期は1日1種目・5分から、慣れてきたら少しずつ増やしてください。

どのくらい続ければ効果が出ますか?

個人差はありますが、2〜4週間で「少し楽になった」と感じる方が多いです。明確な変化を実感するには2〜3ヶ月の継続が目安。短期では結果が見えにくいので、日記やメモで小さな変化を記録すると気づきやすくなります。

うまくできない日があってもいい?

もちろんOK。体調・気分・睡眠状況で日々パフォーマンスは変わります。「できない日があるのは普通」と受け入れて、休む勇気も大切。「諦めない」と「無理しない」のバランスが続ける鍵です。

家族のサポートはどこまで必要?

記憶練習や呼称練習は家族の協力があると効果が大きくなります。一方、感情日記や呼吸法は一人でも可能。「最初は家族と一緒、慣れたら一人で」というステップが続きやすいパターンです。

病院のリハビリと自宅トレーニングの違いは?

病院は専門的評価と個別プログラム、自宅は頻度と継続性が強み。両方を組み合わせることで効果が最大化します。自宅でやった内容を病院のST/OT/PTに伝えると、より個別に最適化してもらえます。

「もう変わらない」と感じるときはどうすれば?

変化は分子レベルで毎日起きていますが、自覚するには時間がかかります。1ヶ月前の自分と比べると気づくことが多いので、日記が役立ちます。それでも変化を感じにくい場合は、リハビリ担当者に相談してメニューを見直しましょう。

📝 まとめ

脳は繰り返すことで変わります。毎日少しずつ、あなたのペースで。

  • 脳の神経可塑性により、繰り返し練習することで脳の回路は強化される
  • ①記憶(遅延再生・日記)②言語(語流暢性・呼称)③聴覚理解(指示練習・まとめ)④感情(呼吸法・感情日記)の4領域をケア
  • 1回5〜10分、家族と一緒に取り組むのが続けやすい
  • 「できた」を大切に。小さな進歩が積み重なって変化につながる
  • 症状の変化は主治医・リハビリ担当者に必ず報告を
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参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス.「記憶・思考・集中力などへの影響(がん関連認知機能障害)」. https://ganjoho.jp/public/support/condition/cognitive_decline/index.html
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⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。掲載しているリハビリは一般的な認知リハビリに基づいた内容ですが、病状・治療状況によって適切な方法は異なります。必ず主治医またはリハビリ担当の専門家にご相談のうえ、ご自身の状態に合った方法でお取り組みください。