🧠側頭葉のリハビリ|「記憶」「言葉」を取り戻すセルフトレーニング4選

「話を聞いてもすぐ忘れてしまう」
「言いたいことが言葉にならない」
そんなもどかしさを感じていませんか?
脳はトレーニングで変わります。あきらめなくて大丈夫です。
脳には「神経可塑性(しんけいかそせい)」という、繰り返し使うことで回路を強化・再構築する力があります。側頭葉が担う記憶・言語・感情のリハビリは、毎日の積み重ねで少しずつ改善が期待できます。
この記事では、患者さんとご家族が自宅で無理なく続けられる4つのリハビリをPT(理学療法士)の視点でわかりやすく紹介します。
- こんな方に向いています:記憶が落ちた・言葉が出にくくなったと感じる方
- こんな方にも:家族と一緒に取り組みたい方
- 特別な道具は不要。今日から自宅ですぐ始められます
- 1回5〜15分。疲れたらすぐ休んでOKです
かつては「脳の細胞は減るだけ」と思われていましたが、現在では脳は繰り返し使うことで回路が強くなることがわかっています。これを「神経可塑性」といいます。
記憶の練習を繰り返すと海馬が刺激され、言葉を出す練習をすると言語野の神経ネットワークが強化されます。「毎日少しずつ」が、何よりも大切なのです。
「覚えること」より「少し後で思い出すこと」が海馬を強く刺激します。すぐに思い出せなくても、ゆっくり頑張ってみましょう。
- 家族に関係のない3つの言葉を言ってもらう。
(例:「バナナ・消防車・鉛筆」) - 5〜10分、別のことをする(テレビを見る・軽い体操など)。
- さっきの3つの言葉を思い出して言う。
- 慣れてきたら、言葉を4つ・5つに増やす。
長い文章を書く必要はありません。その日あったことを3行だけメモするだけでOKです。「書く→後で読み返す」の流れが記憶の定着を助けます。
- 夜寝る前に、今日あったことを3つだけメモする。
- 翌朝、昨日のメモを読み返す。
- 家族に「昨日何があったっけ?」と聞いてもらうのも効果的。
実生活に結びついた記憶の練習は続けやすく、効果も感じやすいです。
- 家族に「今日の買い物リスト3品」を言ってもらう。(例:牛乳・卵・パン)
- 5分後に思い出して言う。
- できたら品数を増やす。
あるカテゴリーの言葉をたくさん思い出す練習です。側頭葉の言語野を広く刺激できます。焦らず、ゆっくり取り組みましょう。
- タイマーを1分にセットする。
- 「動物の名前」をできるだけ多く言う(または書く)。
- 慣れたら「食べ物」「国の名前」「花の名前」などに変えてみる。
- 家族と一緒に交互に言い合うのも楽しい練習になります。
目の前の物の名前を素早く言う練習です。「あれ・それ」を減らして、正確な言葉を取り戻していきましょう。
- 身近な物(時計・コップ・スプーンなど)を3〜5つ用意する。
- 家族が1つずつ指さして「これは何?」と聞く。
- 名前をすぐに答える。
- すぐに出なくても焦らない。ヒントをもらいながらでもOK。
声に出して読むことで、言語野と聴覚野を同時に刺激できます。新聞・絵本・好きな本など、何でも構いません。
- 好きな本や新聞の記事を選ぶ(短い文章でOK)。
- ゆっくり声に出して読む(早さは関係ない)。
- 読んだ後、内容を家族に一言で話してみる。
言葉で伝えられた指示を正確に実行する練習です。段階的に難しくすることで、聴覚理解を少しずつ高められます。
- 【簡単】家族が1つの動作を言う。(例:「立ち上がってください」)
- 【普通】2つの動作をつなげる。(例:「右手を上げて、次に座ってください」)
- 【難しい】3つの動作を組み合わせる。(例:「右手で左の耳を触ってから、立ち上がって、拍手してください」)
- できる難しさから始めてOK。できたら1段階上を目指す。
聞いた情報を整理して言葉にする力を養います。ニュース・バラエティ・ドラマなど、好きな番組で楽しくできます。
- テレビやラジオを2〜3分聞く(ニュース・天気予報など短い内容が◎)。
- 聞き終わったら「今の話、何についてだったと思う?」と家族に聞いてもらう。
- 一言でまとめて答える。(長い文章でなくてOK)
ゆっくりとした深い呼吸は、扁桃体(感情を司る部分)の過剰な活動を落ち着かせる効果があることが研究で示されています。体への負担がほとんどなく、誰でもすぐに始められます。
- 鼻から4秒かけてゆっくり息を吸う。
- 7秒間、息を止める(苦しければ3〜5秒でOK)。
- 口から8秒かけてゆっくり吐く。
- これを3〜5回繰り返す。不安を感じたときにいつでもできます。
「今日どんな気持ちだったか」を書き出すことで、感情のパターンに気づきやすくなります。家族との共有ツールとしても使えます。
- 寝る前に「今日の気持ち」を1〜3つ書く。(例:「なんとなく不安だった」「家族と話してほっとした」)
- 気持ちに点数をつけてみる。(例:不安5点 / 穏やか3点)
- 週に一度、家族と一緒に読み返して傾向を確認する。
「今、ここ」に意識を向ける練習です。難しく考えず、まず「今感じていること」を観察するだけでOKです。
- 椅子に座って、目を閉じる(または手元を見る)。
- 「今、体のどこかに力が入っていないか?」確認して、力を抜く。
- 今聞こえている音、感じている温度を、ただ観察する(1〜2分)。
- 「考えてしまっても大丈夫。また今に戻ってくればいい」
- 疲れたらすぐ中断してください。脳が疲れているときは無理は禁物です。
- 症状が悪化した・新しい症状が出た場合は、すぐに主治医に相談してください。
- 「できない」ことを責めないでください。できた部分に注目しましょう。
- リハビリは医療チームの指導のもとで行うのが理想です。担当者への相談を忘れずに。
私の友人は側頭葉の手術後も物の名前が出てこず、相手に思っていることを伝えられずもどかしさを感じていました。
PTの立場から言うと、脳のリハビリで大切なのは「正確さ」より「継続」です。できなくてもいい。ゆっくりヒントを出してもらいながら取り組む時間そのものが、脳への刺激になっています。焦らず、家族と一緒に、楽しみながら続けてみてください。
- 脳の神経可塑性により、繰り返し練習することで脳の回路は強化される
- ①記憶(遅延再生・日記)②言語(語流暢性・呼称)③聴覚理解(指示練習・まとめ)④感情(呼吸法・感情日記)の4領域をケア
- 1回5〜10分、家族と一緒に取り組むのが続けやすい
- 「できた」を大切に。小さな進歩が積み重なって変化につながる
- 症状の変化は主治医・リハビリ担当者に必ず報告を
- 国立がん研究センター がん情報サービス.「記憶・思考・集中力などへの影響(がん関連認知機能障害)」. https://ganjoho.jp/public/support/condition/cognitive_decline/index.html
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