救急車で運ばれた先は、真夜中の独特な空気が流れる救急救命センター。なんとなく嫌な予感はしましたが、案の定告げられたのは「脳の影」。私の人生で最も長く、そして最も静かな「闘病の1日」が、ここから始まりました。

この記事を書いた人

ZUN プロフィール画像

ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

🏥 救急救命センター、深夜のCT検査

病院に到着してすぐ、意識がまだ完全にはっきりしない中でCT検査を受けました。

運ばれてきた私を待っていたのは、医師からの淡々とした、けれど重みのある一言でした。

「右前頭葉(みぎぜんとうよう)に影があります」

その瞬間はまだ、自分の身に何が起きているのか実感が湧きませんでした。脳腫瘍は中高年の男性に多いと勉強していたので、「まさか私の脳に腫瘍!?」と、ぼんやりしながらも困惑したのを覚えています。

🛏️ 人生初の入院と、確定診断への階段

その夜はそのまま緊急入院となり、私の人生で初めての「入院生活」が幕を開けました。翌日には、より詳しく調べるための造影MRI検査が行われました。

狭い機械の中で響く、工事現場のような音を聞きながら、頭の中は不安と期待が入り混じっていました。そして検査の結果、ついに「右前頭葉の脳腫瘍」という診断が確定したのです。

🧠 脳外科医の言葉

脳外科の主治医からは、画像を見ながら詳しい説明を受けました。

「通常の脳の組織と、腫瘍の部分の境界が比較的はっきりしています。これなら、おそらく悪性度はそこまで高くない(グレードが低い)ものではないでしょうか」

🌅 かすかな希望、そして眠れない夜

主治医の言葉に、絶望の中に一筋の光が見えたような気がしました。手術は避けられない。けれど、悪性でないならば、きっと大丈夫。そう自分に言い聞かせていました。

しかし、どうしても安心材料が欲しくて、何度も何度もインターネットで「脳腫瘍 余命」「脳腫瘍 悪性 予後」などと調べていました。手術までの日取りは、ポジティブな記事を繰り返して読み、不安を払拭しようとする日々を過ごしていました。

🩺 PT(理学療法士)として、振り返って思うこと

理学療法士として、私はこれまで「腫瘍があります」「影が見えます」という説明を受けた直後の患者さんを、何度もリハビリ室で迎えてきました。表面上は落ち着いていても、その夜は眠れていない方が大半です。

あの時の私もそうでした。「境界がはっきりしている」という主治医の言葉を、PTの知識として「グレード低い可能性が高い」と理解できたはずなのに、夜になると「脳腫瘍 余命」を何度も検索している自分がいました。

知識があっても、当事者になると感情にはかなわない。冷静に解説できる立場の私が、ベッドの上では一人の不安な患者でした。だからこそ今、リハビリに来る患者さんが「実はこんなこと検索しちゃって…」と打ち明けてくれた時、「わかります、私もそうでした」と、心の底から共感できるようになったのだと思います。

※この記事について:本記事は、ZUN個人の実体験に基づいた手記です。CT・MRI画像の所見や悪性度の判定は、必ず担当医師による総合判断が必要です。気になる症状や不安がある方は、自己判断せず必ず医療機関を受診してください。
ABOUT ME
アバター画像
ZUN
🩺 理学療法士|脳腫瘍サバイバー|長野県在住 2016年に理学療法士の国家資格を取得し、総合病院の急性期病棟で 脳卒中・整形外科リハビリを担当(糖尿病療養指導士/呼吸器リハ研修・がんリハ研修修了)。 2024年、悪性星細胞腫グレード3を発症。手術・放射線・化学療法を経て 現役で職場復帰。「医療者の知識」と「患者の実体験」の両方から、 脳腫瘍患者さんとご家族の力になる情報を発信しています。 詳細プロフィールは👇https://zunsyuyotaiken.com/profile/