⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療・リハビリの代替ではありません。実際のリハビリは必ず主治医や担当セラピストの指示に従ってください。
📖 このページでわかること
  • 「早期離床」が回復を早める理由と具体的なメリット
  • 術後早期からできる自主トレーニング4種類
  • 入院中のおすすめタイムスケジュール(時間別)
  • ZUNが実際に術後に取り組んだ体験談

脳腫瘍の手術後、「できるだけ早く回復したい」と思う方は多いでしょう。しかし実際には、どのくらい動いてよいのか、いつから運動してよいのか、入院中はどう過ごせばよいのかと悩む患者さんやご家族は少なくありません。

近年の研究では、脳の手術後は早期から身体を動かす「早期離床」やリハビリテーションが重要とされています。適切な運動を行うことで、筋力低下の予防・合併症の予防・脳機能の回復につながると考えられています。

この記事では理学療法士(PT)の視点から、回復を早める早期離床のメリット、術後早期からできる自主トレーニング、入院中のおすすめの過ごし方についてわかりやすく解説します。

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ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

回復を早める「早期離床」のメリット

🏃 回復を早める「早期離床」のメリット

脳腫瘍の手術後は安静も必要ですが、可能な範囲で早く身体を起こし活動すること(早期離床)が回復への近道です。術後早期(24〜48時間以内)からの離床を目標に取り組むことが、現在の医療標準となっています。

💪
筋力低下を防ぐ
長期間ベッドで過ごすと、筋肉は急速に弱くなります。体力低下・麻痺・バランス能力低下が起きやすい術後だからこそ、早期から身体を動かすことが重要です。
🛡️
合併症を予防する
長時間の安静は肺炎・深部静脈血栓症(DVT)・褥瘡・尿路感染などの原因になります。研究では、早期離床を行った患者は合併症が少ない可能性が示されています。
🧠
脳の回復を促す
脳は使うことで神経ネットワークが再構築されると考えられています(脳の可塑性)。歩く・座る・体を動かすといった活動が、機能回復につながる可能性があります。

私(ZUN)の場合は術後1日目から座る練習をはじめ、3〜4日目には5m程度の歩行練習まで進みました。最初は頭がふわふわして不安でしたが、「動いてよいのだ」とわかると回復への意欲がぐっと高まりました。

麻痺の残っている手足については、実際に動かせない日でも「運動イメージ(頭の中でイメージするトレーニング)」を活用して、少しでも脳への刺激を送るよう意識していました。

術後早期からできる自主トレーニング

🏋️ 術後早期からできる自主トレーニング
⚠️ 以下のトレーニングは、必ず主治医やリハビリスタッフの許可を得てから行ってください。状態によって行える運動は異なります。

病院でのリハビリに加えて、自主トレーニングを行うことで回復スピードは大きく変わります。以下の4種類はベッド上や病室でできるものです。

🦶 ①足首の運動(血栓・むくみ予防)

ベッド上でできる最もシンプルな運動です。

  1. 仰向けで寝る
  2. 足首をゆっくり手前に曲げる(背屈)
  3. 足首をゆっくり下に伸ばす(底屈)
  4. これを 20回 × 3セット 繰り返す
🎯 効果:血栓(DVT)予防・むくみ改善・ふくらはぎの筋力維持
🧠 ②運動イメージ(モーターイメージ)

体を動かすことが難しい場合でも、頭の中で動作をイメージするだけで脳の運動関連ネットワークが活性化することが研究で報告されています。

  • 歩いている自分を鮮明にイメージする
  • 仕事や趣味をしているときの手の動きを想像する
  • 麻痺のない方の手足を動かしながら、麻痺側も同様に動かすイメージをする
🎯 こんなときに特に有効:麻痺がある/疲れている/まだ運動量を増やせない場合
🪑 ③座る練習(体力・バランス回復)

まだ起き上がれない場合は、まずベッドの背もたれを少しずつ高くするところから始めましょう。

  1. ベッドの角度を少し上げ、上半身を起こす(30°→45°→60°と段階的に)
  2. 慣れてきたらベッドの端に腰掛ける「端座位(たんざい)」を行う
  3. 座る時間を少しずつ延ばしていく(最初は5〜10分から)
🎯 効果:体力回復・血圧の安定・バランス能力の改善
🧍 ④立ち上がり練習(日常生活動作の回復)
⚠️ 転倒の危険があります。必ずセラピストの許可・見守りのもとで行ってください。
  1. 椅子に浅く腰掛ける
  2. 足を少し後ろに引く
  3. 前かがみになりながらゆっくり立ち上がる
  4. 5回 × 2〜3セット を目安に行う
🎯 効果:下肢筋力の改善・バランス能力の向上・歩行能力の回復

入院中のおすすめタイムスケジュール

🕐 入院中のおすすめタイムスケジュール

回復を早めるためには、1日の活動量を少しずつ増やすことが大切です。以下はあくまでも一例です。主治医・リハビリスタッフと相談しながら、自分のペースで調整してください。

時間内容ポイント
7:00起床寝たまま軽い運動(足首運動など)
8:00朝食できるだけ頭を上げた姿勢で
9:00歯磨き・顔拭きできれば両手で・鏡を使う
10:30病院リハビリPT・OT・ST(担当セラピストと)
12:00昼食頭を上げながら・椅子でできれば
13:00休憩腹式呼吸でリラックス
14:00病院リハビリPT・OT・ST(2回目がある日)
15:30自主トレ前述の運動・運動イメージなど
18:00夕食可能なら椅子・端座位で
19:00脳トレパズル・計算・好きなことを楽しむ
21:00就寝睡眠も回復に欠かせない

💡 無理をする必要はありません。体調が優れない日は休むことも回復の一部です。少しずつ活動時間を増やすことを目標にしましょう。

まとめ

📝 まとめ

脳腫瘍術後の回復を早めるために

  • 術後早期(24〜48時間以内)からの離床・活動が、現在の医療標準
  • 足首運動・運動イメージ・座る練習・立ち上がりの4つを段階的に取り組む
  • 病院リハビリ+自主トレを組み合わせることで回復スピードが変わる
  • 1日のスケジュールを意識して、少しずつ活動量を増やす
  • すべての運動は主治医・リハビリスタッフの許可・指示のもとで行う

脳腫瘍の手術後の入院生活は、不安や焦りとの戦いでもあります。「正しく動くこと」が「回復への近道」であることを知っておくだけで、気持ちが少し楽になるかもしれません。主治医やリハビリスタッフと相談しながら、無理のない範囲で取り組んでいきましょう。

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📚 参考文献・引用元

  1. 日本リハビリテーション医学会. 「がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版」2019年. https://www.jarm.or.jp/
  2. 国立がん研究センター. 「がんとリハビリテーション医療」2023年. https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/rehabilitation/index.html
  3. Shinoura N, et al. “Early mobilization in postoperative glioma patients: a multi-center retrospective study.” Scientific Reports. 2025;15:8291. https://www.nature.com/articles/s41598-025-01871-w
  4. Köseoğlu BF, et al. “Functional State and Rehabilitation after Primary Brain Tumor Surgery: A Retrospective Analysis.” Cancers (Basel). 2023;15(5):1413. PMC10217089
  5. Rønning PA, et al. “Early medical rehabilitation after neurosurgical treatment of malignant brain tumours: a randomised controlled trial.” BMJ Open. 2016;6(11):e012217. PMC4852966
  6. Arya KN, et al. “Motor Imagery-Based Rehabilitation: Neural Correlates and Clinical Application in Stroke.” Frontiers in Neurology. 2017;8:436. PMC5440115
  7. Chen Y, et al. “Which Frequency of Ankle Pump Exercise Is the Most Effective for Preventing Deep Vein Thrombosis?” Frontiers in Surgery. 2022;9:876802. PMC9168852
  8. Gehring K, et al. “Rehabilitation interventions for glioma patients: a mini-review.” Frontiers in Oncology. 2023;13:1168470. PMC10313351
  9. Huang ME, et al. “Brain Tumor Rehabilitation: Symptoms, Complications, Unique Challenges, and Treatment Strategies.” Physical Medicine and Rehabilitation Clinics of North America. 2023;34(1):31-48. PMC9833490
  10. 国立がん研究センター中央病院. 「手術の合併症を減らし回復を早めるリハビリ指導」サポーティブケアチーム. https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/support/staff_interview/002/index.html
⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療・リハビリの代替ではありません。記事内の運動・トレーニングは必ず主治医や担当セラピストの指示・許可のもとで行ってください。