⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。気になる症状がある場合は必ず医師にご相談ください。

「グリオーマのグレードって、どういう意味なんだろう」「グレード3と言われたけど、どのくらい深刻なの?」——告知を受けた直後、そんな疑問や不安でいっぱいになるのは当然のことです。僕自身も同じ場所に立ったことがあります。数字の意味を必死にネットで調べた夜のことは、今でも忘れません。この記事では、グリオーマのグレードについてできるだけ優しく・正確にお伝えします。

📖 このページでわかること
  • グリオーマのグレードとは何かが具体的に理解できる
  • WHO 2021年分類での最新の診断基準がわかる
  • IDH変異・MGMT検査の重要性と治療への影響がわかる
  • グレード別の治療選択肢と生存データを客観的に把握できる
  • 数字に振り回されない心の持ち方が身につく

この記事を書いた人

ZUN プロフィール画像

ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

🧠 グリオーマとは?

グリオーマ(神経膠腫・しんけいこうしゅ)とは、脳の中にある「グリア細胞」から発生する腫瘍の総称です。脳腫瘍全体の約40〜50%を占め、最も多いタイプです。

2021年に改訂されたWHO分類では、分子診断(遺伝子検査)が必須となり、より正確な診断と個別化治療が可能になっています。

📊 主なグリオーマの種類
🔵 成人型びまん性グリオーマ(最も一般的) 🟡 小児型びまん性グリオーマ(小児・若年者に多い) 🟢 限局性星細胞腫(境界が明瞭なタイプ)

📊 グレード1〜4、それぞれどんな感じ?

グリオーマのグレードとは、「腫瘍細胞がどのくらい速く増えるか」と「どのくらい正常な脳に入り込んでいるか」を示す数字です。数字が大きいほど悪性度が高くなります。

グレード特徴5年生存率代表的なタイプ主な治療法
Grade 1増殖が非常に遅い
浸潤(しんじゅん:がん細胞が正常組織に入り込むこと)も限定的
90〜95%毛様細胞性星細胞腫
(小児に多い)
手術のみで完治可能なことも
Grade 2ゆっくり育つが浸潤性あり
高次グレードへ変化する可能性
70〜80%IDH変異乏突起膠腫
IDH変異星細胞腫
摘出術±放射線・化学療法
Grade 3中〜高度の増殖速度
周囲への浸潤が目立つ
30〜70%
(IDH変異の有無で大きく異なる)
IDH変異星細胞腫
IDH変異乏突起膠腫
手術+放射線治療+化学療法
Grade 4非常に速い増殖
積極的な浸潤と血管新生
15〜20%膠芽腫(こうがしゅ・GBM)
IDH野生型が大部分
手術+放射線+テモゾロミド
(Stuppレジメン)
Grade 1
特徴 増殖が非常に遅い/浸潤(しんじゅん:がん細胞が正常組織に入り込むこと)も限定的
5年生存率 90〜95%
代表的なタイプ 毛様細胞性星細胞腫(小児に多い)
主な治療法 手術のみで完治可能なことも
Grade 2
特徴 ゆっくり育つが浸潤性あり/高次グレードへ変化する可能性
5年生存率 70〜80%
代表的なタイプ IDH変異乏突起膠腫/IDH変異星細胞腫
主な治療法 摘出術±放射線・化学療法
Grade 3
特徴 中〜高度の増殖速度/周囲への浸潤が目立つ
5年生存率 30〜70%(IDH変異の有無で大きく異なる)
代表的なタイプ IDH変異星細胞腫/IDH変異乏突起膠腫
主な治療法 手術+放射線治療+化学療法
Grade 4
特徴 非常に速い増殖/積極的な浸潤と血管新生
5年生存率 15〜20%
代表的なタイプ 膠芽腫(こうがしゅ・GBM)/IDH野生型が大部分
主な治療法 手術+放射線+テモゾロミド(Stuppレジメン)
💡 数字だけに振り回されないでください 生存率は統計的な目安です。個人の予後は年齢・全身状態・遺伝子変異の有無・治療への反応など多くの要因で決まります。同じグレードでも、個人差は数年〜十数年単位で出ることがあります。

🧬 「IDH変異」「MGMT」って何のこと?

現在のグリオーマ診断では、遺伝子検査(分子診断)が治療方針を決める最も重要な要素です。グレードの数字だけでなく、これらの検査結果が予後を大きく変えることがあります。

🧪 IDH変異
イソクエン酸脱水素酵素

グリオーマ診断で最初に確認する重要な遺伝子変異です。

✔ 変異あり

化学療法・放射線によく反応。予後良好傾向(中央生存期間10〜15年以上の報告も)

▲ 野生型(変異なし)

より積極的な治療が必要。新しい治療薬の研究も進んでいます。

🧪 MGMTプロモーターメチル化
抗がん剤の効きやすさの目安

「メチル化あり」の場合、テモゾロミド(抗がん剤)が効きやすい状態です。

✔ メチル化あり

中央生存期間 約20〜23ヶ月(膠芽腫の場合)

▲ メチル化なし

中央生存期間 約12〜15ヶ月(TTFieldsなど新規治療も選択肢)

🧪 1p/19q共欠失
乏突起膠腫に特有

乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ)に特有の染色体変化。化学療法に非常によく反応します。

✔ 共欠失あり

中央生存期間14〜20年の報告あり。長期生存も十分期待できます。

🤝 担当医に聞いてみよう
  • 「IDH変異とMGMTの結果はどうでしたか?」
  • 「この結果が治療選択にどう影響しますか?」
  • 「1p/19q共欠失の検査はしましたか?」

聞いていけないことなんて、何もありません。

🌿 ZUN体験談|第5話より

「グレード3」と告げられた日のこと

術後1か月の外来で、「悪性星細胞腫グレード3」と告知されました。PTとして数字に慣れていたせいか、その場では意外と冷静でいられました。

でも帰りの車の中で、妻と二人で号泣しました。「あとどのくらい生きられるんだろう」「娘はまだ小さいのに」——そんな気持ちがぐるぐると回りました。

それでもその夜に決めました。「泣いても笑っても同じ1日。だったら笑って過ごそう」と。数字は目安にすぎない。あなたの未来は、その数字だけでは決まらないのです。

👉 第5話を読む

❓ よくある質問

Q. グレードが高いと、必ず予後が悪いのですか?
Aいいえ、必ずしもそうではありません。分子診断の結果(IDH変異・MGMT・1p/19q等)、年齢、全身状態、治療への反応など複合的な要素が影響します。同じグレードでも生存期間に数年〜十数年の差が出ることもあります。
Q. IDH変異がないと、治療効果は期待できませんか?
AIDH野生型でも治療効果は十分期待できます。MGMTメチル化の状況によってテモゾロミドの効果が予測できますし、電場治療(TTFields)や免疫療法など新しい選択肢も増えています。
Q. セカンドオピニオンは受けるべきでしょうか?
A脳腫瘍は専門性が高く、施設によって治療方針が異なることがあります。特に大学病院・がん専門病院では最新の分子診断技術が利用できることも。納得して治療を受けるためにも、セカンドオピニオンをお勧めします。
Q. 仕事や日常生活は続けられますか?
A多くの患者さんが工夫しながら仕事・日常生活を継続されています。治療スケジュールに合わせた勤務調整、リハビリテーション、社会保障制度(傷病手当金・障害年金等)の活用も選択肢の一つです。

📝 まとめ

  • ✅ グリオーマの分類はWHO 2021年基準で分子診断が必須となり、個別化治療が可能になっています
  • ✅ グレードだけでなくIDH変異・MGMT・1p/19q共欠失が予後と治療を大きく左右します
  • ✅ 同じグレードでも分子診断の結果により生存期間に数年〜十数年の差が出ることがあります
  • ✅ 統計データは目安。個人の予後は多くの要因によって決まります
  • ✅ 不安な時は担当医に具体的な質問をして、納得いく説明を求めましょう

数字は大切な情報ですが、それがすべてではありません。あなたの治療が順調に進むよう、ZUNも心から応援しています。

📚 参考文献
  1. Louis DN, et al. “The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary.” Neuro Oncol. 2021;23(8):1231–1251. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34185076/
  2. 国立がん研究センター. “神経膠腫(グリオーマ)について.” がん情報サービス. https://ganjoho.jp/public/cancer/glioma/about.html
  3. 国立がん研究センター. “神経膠腫(グリオーマ)の治療.” がん情報サービス. https://ganjoho.jp/public/cancer/glioma/treatment.html
  4. Hegi ME, et al. “MGMT gene silencing and benefit from temozolomide in glioblastoma.” N Engl J Med. 2005;352(10):997–1003. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15758010/
  5. Yan H, et al. “IDH1 and IDH2 mutations in gliomas.” N Engl J Med. 2009;360(8):765–73. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19228619/
  6. Stupp R, et al. “Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma.” N Engl J Med. 2005;352(10):987–996. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15758009/
  7. van den Bent MJ, et al. “Adjuvant PCV chemotherapy in anaplastic oligodendroglioma.” J Clin Oncol. 2013;31(3):344–50. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23071237/
  8. Eckel-Passow JE, et al. “Glioma Groups Based on 1p/19q, IDH, and TERT Promoter Mutations.” N Engl J Med. 2015;372(26):2499–508. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26061753/
  9. Reifenberger G, et al. “Advances in the molecular genetics of gliomas — implications for classification and therapy.” Nat Rev Clin Oncol. 2017;14(7):434–452. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28270684/
  10. Aldape K, et al. “Challenges to curing primary brain tumours.” Nat Rev Clin Oncol. 2019;16(8):509–520. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30967619/
  11. Patel SH, et al. “Molecular Testing in Gliomas: What is Necessary in Routine Clinical Practice?” Curr Oncol Rep. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39361075/
  12. Kawaguchi T, et al. “Eighty percent survival rate at 15 years for 1p/19q co-deleted oligodendroglioma treated with upfront chemotherapy irrespective of tumor grade.” J Neurooncol. 2019;142(1):85–93. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30565028/
  13. Takahashi S, et al. “Oligodendroglioma, IDH-mutant and 1p/19q-codeleted — prognostic factors, standard of care and future perspectives.” Jpn J Clin Oncol. 2024. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38564040/
⚠️ この記事の内容は医学的アドバイスではありません。個別の症状・治療については必ず担当医にご相談ください。
ABOUT ME
アバター画像
ZUN
🩺 理学療法士|脳腫瘍サバイバー|長野県在住 2016年に理学療法士の国家資格を取得し、総合病院の急性期病棟で 脳卒中・整形外科リハビリを担当(糖尿病療養指導士/呼吸器リハ研修・がんリハ研修修了)。 2024年、悪性星細胞腫グレード3を発症。手術・放射線・化学療法を経て 現役で職場復帰。「医療者の知識」と「患者の実体験」の両方から、 脳腫瘍患者さんとご家族の力になる情報を発信しています。 詳細プロフィールは👇https://zunsyuyotaiken.com/profile/