23時、いつものように晩酌を楽しんでいた日常が、一瞬で消え去りました。原因は、前触れもなく襲ってきたてんかん発作。本人の記憶が全くない中で進んでいく救急搬送の様子と、人生初の救急車の中で感じたことをお話しします。

日常からの急転直下

PM 11:00。

いつものように夕食の片付けを終え、お気に入りの「人をダメにするクッション」に身を預けていました。片手にはハイボール。テレビの中ではお笑い芸人が場を盛り上げている。

そんな、どこにでもある平和な夜の風景が、私の記憶にある健常人最後の「日常」でした。

空白の時間と、目の前の救急隊員

次に目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは天井ではなく、救急隊員の顔でした。

「……え、なんで救急隊がここに?」

意識がまどろみ、現実がうまく飲み込めませんでした。呆然とする私に、隣にいた妻が切迫した声で教えてくれました。

「あなた、てんかん発作で倒れたんだよ!」

自分の知らない「自分」の姿

妻の話によると、異変は隣の寝室まで響く「ガタガタッ」という激しい音から始まったそうです。

駆けつけた妻が目にしたのは、激しく体を震わせる強直性発作(きょうちょくせいほっさ)**を起こしている私の姿。さらに恐ろしいことに、発作が収まった後も意識が戻らぬまま、泥酔者のように支離滅裂なことを言いながら部屋を徘徊していたというのです。

本人の記憶は一秒たりとも残っていないのに、身体だけが勝手に動いていた。その事実に、後から深い衝撃と恐怖を感じました。

人生初の救急車、硬いタンカーと人の温もり

そのまま人生で初めて、タンカーに揺られて救急車へと運び込まれました。

背中に伝わるタンカーの感触は驚くほど硬く、無機質です。しかし、そんな不安を打ち消してくれたのは、救急隊の方々の優しさでした。

「大丈夫ですよ」「今から病院に向かいますからね」

車内の設備を眺めながら交わした何気ない会話が、混乱していた私の心を温かく包み込んでくれました。こうして私は、予期せぬ事態へと足を踏み出していったのです。