「良性だと思う」という言葉を信じ、日常を取り戻そうとしていた矢先の、主治医からの突然の電話。告げられたのは「悪性星細胞腫グレード3」という現実でした。絶望の淵で妻と涙を流し、幼い娘の寝顔に胸を締め付けられた日々を経て、私が行き着いた「時間の使い方」についての記録です。

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ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

☎️ 鳴り響いた予定外の電話、嫌な予感

手術から1ヶ月後の診察を待っていた退院後2週間のある日、見知らぬ番号から電話が入りました。受話器の向こうからは、主治医の声。「病理検査の結果が出たから、予定を早めて診察に来られないかな?」

その一言で、心臓の鼓動が早くなるのを感じました。術後は「良性の所見だと思う」と言われていたのに……。呼ばれたと言うことは…信じたくない、けれど否定できない不安が、じわじわと全身を侵食していきました。

😢 診察室での告知、帰宅の車中での号泣

診察室で淡々と述べられた病理検査の画面と「悪性星細胞腫グレード3」という名の現実。あまりのショックに、私は現実逃避するように半笑いで妻の顔を見てしまいました。病院を出るまでは二人とも平然を装っていましたが、限界はすぐに訪れました。

帰路、赤信号で止まった瞬間に妻が泣き崩れ、目の前が見えなくなったため道路脇に車を止めました。それにつられるように、私も声を上げて泣きました。ようやく、自分の身に起きたことを本当の意味で受け止めた瞬間でした。

🌑 「グレード3」という数字と向き合う日々

家に戻ってからは、憑かれたように「悪性星細胞腫」という言葉を検索し続けました。余命、予後、生存率……。暗い情報ばかりが目に付く中で、「グレード3でも寛解(かんかい)することがある」という一筋の光を見つけ、なんとか心を支えました。

しかし、無邪気に遊ぶ娘の姿を見るたびに、涙が溢れて顔を見ることができない。そんな、張り裂けそうな数日間を過ごしました。

⏳ 「時間は誰にでも限られている」という気づき

そんな絶望の底で、一つの考えに辿り着いたことがあります。「健常者であっても、病気であっても、人生の時間は等しく限られている」ということ。当たり前のはずの事実に、生まれて初めて心の底から気づかされたのです。

「泣いて過ごしても、笑って過ごしても、同じ1日」

そう決意してからは、娘と思いっきり遊び、1年で2度もディズニーへ行きました。これからも、限られた時間を愛おしみ、大切に使い切ろうと思っています。

🩺 PT(理学療法士)として、振り返って思うこと

リハビリ職として、私はこれまでがん告知直後の患者さんをリハビリ室で迎えてきました。「悪性です」——そんな言葉を受け取った直後の患者さんは、表面的にはいつも通り見えることが多いです。しかし、心の中では不安が渦を巻いているような瞳をしているように感じます。

自分が当事者になって、その理由がやっと分かりました。あの瞬間、私たちは目の前の風景を見ているのではなく、「これからの自分の人生」を見つめていると思います。妻の隣で半笑いを浮かべながら、頭の中では「娘の結婚式は見られるのか」を計算していた——それが告知された人間の、嘘偽りのない現実でした。

そして、家に戻って「余命」「生存率」を検索する手が止まらない。あの検索は絶望に向かう作業ではなく、希望のかけらを探す作業なのだと、今ならわかります。「グレード3でも寛解することがある」——その一文を見つけた瞬間、安堵に包まれて眠りにつけました。

今、リハビリ室で告知直後の患者さんを迎えるとき、私は「昨日、ちゃんと眠れましたか?」と尋ねるようにしています。リハビリの内容よりも、まずその一言が、今あの瞳の奥にいる人に届く言葉だと思うから。

※この記事について:本記事は、ZUN個人の実体験に基づいた手記です。脳腫瘍の悪性度(グレード)や予後は、腫瘍の種類・部位・年齢・全身状態によって大きく異なります。告知後の不安や落ち込みは自然な反応ですが、つらい状態が続く場合は担当医や心療内科・がん相談支援センターにご相談ください。
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ZUN
🩺 理学療法士|脳腫瘍サバイバー|長野県在住 2016年に理学療法士の国家資格を取得し、総合病院の急性期病棟で 脳卒中・整形外科リハビリを担当(糖尿病療養指導士/呼吸器リハ研修・がんリハ研修修了)。 2024年、悪性星細胞腫グレード3を発症。手術・放射線・化学療法を経て 現役で職場復帰。「医療者の知識」と「患者の実体験」の両方から、 脳腫瘍患者さんとご家族の力になる情報を発信しています。 詳細プロフィールは👇https://zunsyuyotaiken.com/profile/