第7話:放射線と抗がん剤治療の開始。

🩹 治療開始前のトラブル、腐った縫合糸と「お面」の作成
病理診断が終わり、いよいよ放射線治療へ……という矢先、術後の傷口が膿んでいることが判明しました。原因は、なんと縫合糸の腐敗。放射線治療に必要な「お面(シェル)」を作るためには、まずこの感染を治さなければなりませんでした。
形成外科で局所麻酔を打ちながらの異物除去。術後の身体に、この処置の痛みはなかなか堪えるものでした。
😣 喉の違和感と滲出液、むせ込みに耐えた10分間
術中の気管挿管の影響か、喉にはずっとイガイガとした痛みが残っていました。放射線治療は、頭部をシェルで完全に固定して行われます。固定された状態で襲ってくる、むせ込むような感覚。
さらに感染部位からは滲出液が出るため、シェルをつけるたびにガーゼを当てる処置も必要でした。動けない10分間、身体の不調を堪え忍ぶ時間は、精神的な忍耐を要しました。
💊 抗がん剤「Stuppレジメン」と12コースへの決意
私の受けた治療は、悪性星細胞腫の標準治療である「Stuppレジメン」(←Stuppさんが編み出した治療)です。放射線治療(1日2グレイ×30回)と並行して、放射線の効果を高めるために毎日少量の抗がん剤を服用しました。
放射線終了後は5日間”テモダール”を内服、23日休薬を挟みながら内服量を増量していくのですが、主治医からは「米国は6コース、日本は12コース行うことが多く、日本の方が成績が良い」という説明がありました。
私は迷うことなく、より良い結果を信じて12コース完走することを決意しました。
🏠 幼い娘を守るために、家庭内での「抗がん剤曝露」対策
抗がん剤服用中、最も気を使ったのが娘への影響です。体液から成分が出ると薬剤師の方から説明を受けたため、排泄や入浴、汗のついた洗濯物は分けた方が無難だと聞き、徹底した対策を講じました。
トイレは私専用として2階を使用し、お風呂は最後に入るか暖かい日はシャワーのみ。汗をかいた下着や服は別に洗濯するなど、大切な家族を「薬」から守るための工夫を積み重ねました。
🩺 PT(理学療法士)として、振り返って思うこと
リハビリ職として、私は放射線治療を受けながらリハに通う患者さんを何度も担当してきました。「シェルで固定される10分間が辛い」「終わった後はリハビリはやめとくよ」——よく耳にする言葉でしたが、自分が実際に体験するまで、その「10分間の重み」を本当には理解できていませんでした。
固定された状態でむせ込みそうになっても動けない。あの辛さは、想像していたものの数倍重いものでした。今、放射線後の患者さんにリハビリに入るときには、必ず「放射線の後は無理しなくていいですよ。」と一言添えるようにしています。
そして、「Stuppレジメン12コース」という決断について。米国基準(6コース)と日本基準(12コース)の違いを医師から提示されたとき、選ぶのは自分自身です。「治療効果を最大化したい」自分と、「副作用で家族との時間を削りたくない」自分——二つの気持ちが揺れました。最終的に12コースを選んだのは、PTとしてのデータ知識ではなく、「もう少し長く家族と過ごせる可能性があるなら」という当事者としての願いでした。
そして、最も伝えたいこと——家庭内曝露対策で頭をいっぱいにしすぎないでほしい、ということです。トイレ別、洗濯別、お風呂順——大切な対策ですが、それらに完璧を求めすぎると、治療継続の精神的負担が膨大になります。「家族を守る」と「自分の心を守る」のバランスを、薬剤師さんや看護師さんと相談しながら見つけてほしいと思います。











