「副作用は遅れてやってくる」――がん拠点病院で「がんリハビリテーション講習会」を修了し、知識としては理解していたはずの私。しかし、実際に自分の髪が失われ、血液データが書き換えられていく恐怖は、想像を遥かに超えるものでした。仕事と治療を両立しながら、副作用の波をどう乗り越えたのか。リハビリ職としての工夫の記録です。

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ZUN

理学療法士 × 脳腫瘍グレード3サバイバー

医療者として、そして患者として、両方の視点から脳腫瘍と向き合う方とそのご家族に、少しでも安心できて役立つ情報を届けられるように心がけています。

理学療法士(国家資格・2016年取得)/糖尿病療養指導士
脳卒中・整形外科・消化器・血液内科などのリハビリに従事
研修修了:呼吸器・がんリハビリ

手術・入院・リハビリ・退院後の生活を、臨床知識と実体験ベースでお伝えしています。

💇‍♂️ さらば、マイヘアー

放射線の副作用といえば、やはり脱毛です。最初は「これくらいなら大丈夫」と思っていましたが、照射が強かった右前から耳上にかけて、みるみる髪が去っていきました。

しばらくすると、頭頂部と後頭部だけが残る無惨な姿に、私は大きな決断を迫られました。額が広く坊主は似合わないと避けてきましたが、「このままよりはマシだ」と人生2度目の丸坊主を決意。テモダールの6コース目あたりでようやく落ち着き、1年半かけて元の長さに戻るまでの、長い戦いの始まりでした。

🩸 血液データの変動、テモダール増量と28日間の休薬

テモダール(抗がん剤)の維持療法に入り、2クール目から投与量を増やしたところ、白血球と血小板が急激に減少しました。

「このまま治療を続けられるのか?」という不安の中、28日間の休薬期間を設け、採血。休薬のおかげで血球値は回復。結局、3クール目からは初期投与量と同じ量で継続することになりました。血液検査の数値一つに一喜一憂する、がん治療の厳しさを肌で感じた瞬間でした。

📅 仕事と治療の両立、副作用の波と戦う一週間のルーティン

職場復帰を果たしていた私は、仕事と治療のスケジュール管理に苦心しました。水曜日に診察を受け、木・金は副作用が軽いため出勤。しかし、服用3日目(金曜日)の昼を過ぎたあたりから、徐々に消化器症状(猛烈な便秘、吐き気、倦怠感)が全身を襲います。

土・日・月の3日間は、ひたすら消化器症状に苦しむ時間。カレンダーと睨めっこしながら、体調の波を予測して「耐える」日々を過ごしました。

🏃‍♂️ 学んだ知識を活かして、吐き気止めと「有酸素運動」による克服

この辛い消化器症状を乗り切るために、私は自分なりの対策を講じました。メトクラプラミド(吐き気止め)を適切に使用するのはもちろん、意外な特効薬となったのが「有酸素運動」です。

「身体が重いときこそ、あえて少し汗ばむ程度の運動をする」。これが驚くほど効果的でした。リハビリ職としての知識を自分の体で証明するように、運動の力を借りて副作用の波をやり過ごしていきました。

🩺 PT(理学療法士)として、振り返って思うこと

「副作用は遅れてやってくる」——がんリハビリ講習会で学んだ言葉です。知識として完全に理解していたはずなのに、自分の髪が排水溝に大量に流れていくのを見た瞬間、「知っている」と「経験する」の間にある巨大な溝を実感しました。

脱毛は、外見の変化以上に「治療が体を変えている」という現実を毎日突きつけてくる副作用です。鏡を見るたびに、目をそらしたくなる日もありました。だからこそ、リハビリ室で脱毛中の患者さんと話すとき、「髪のことには触れない」のではなく、「いつでも話していい」という空気を作ることを意識するようになりました。

そして、私が今、副作用に悩む患者さんに最も伝えたいのは「有酸素運動」の力です。「だるい時に動くなんて無理」と思われがちですが、身体を動かすと逆に倦怠感が軽くなる——これはPTとしての教科書知識ではなく、自分の身体で何度も実証した事実です。激しい運動ではなく、「少し汗ばむ程度の散歩」で十分。私はテモダール服用後の倦怠感を、家庭菜園で何度も乗り越えました

仕事との両立については、「カレンダーと体調の波を一致させる」戦略が決定打でした。水曜診察→3日目から悪化→月曜まで耐える→火曜には回復——このパターンを読み切ることで、無理のない出勤計画が立てられました。リハビリ職に限らず、「副作用の波を見える化する」ことは、仕事を続けたいすべての患者さんに有効な工夫だと思います。

※この記事について:本記事は、ZUN個人の実体験に基づいた手記です。テモゾロミドの投与量・休薬期間・副作用の出現タイミングは、患者さんの状態によって医師が個別に判断します。吐き気止めの使用や運動療法の導入は、必ず担当医師・薬剤師・理学療法士にご相談のうえ行ってください。
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ZUN
🩺 理学療法士|脳腫瘍サバイバー|長野県在住 2016年に理学療法士の国家資格を取得し、総合病院の急性期病棟で 脳卒中・整形外科リハビリを担当(糖尿病療養指導士/呼吸器リハ研修・がんリハ研修修了)。 2024年、悪性星細胞腫グレード3を発症。手術・放射線・化学療法を経て 現役で職場復帰。「医療者の知識」と「患者の実体験」の両方から、 脳腫瘍患者さんとご家族の力になる情報を発信しています。 詳細プロフィールは👇https://zunsyuyotaiken.com/profile/