⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。診断・治療の代替ではありません。手術の適応・方法・リスクについては必ず担当医師にご相談ください。

「どんな手術なんだろう…」「怖くないかな…」
開頭手術が決まったとき、ZUNも同じ気持ちでした。少しでも不安がやわらぐように、手術の流れを丁寧にまとめました。

📋 このページでわかること
  • 脳腫瘍の3つの手術方法(開頭・覚醒下・内視鏡)の違い
  • 術前入院・検査・手術当日の流れ(入室〜摘出〜閉頭)
  • 術後ICU〜一般病棟〜退院までの回復タイムライン
  • 合併症・後遺症と術後リハビリの進め方
  • ZUN自身の手術体験(第3話・第4話)から得たリアルな情報

脳腫瘍と診断されて「手術が必要」と言われたとき、多くの人が「どんな手術をするの?」「術後はどうなるの?」「後遺症は残る?」と不安を感じます。私(ZUN)も同じでした。

この記事では、脳腫瘍の主な手術法である開頭手術について、手術の流れ・術前準備・術後回復・リハビリを、PT(理学療法士)でもあるサバイバー目線でわかりやすく解説します。

🧠 脳腫瘍の手術方法|開頭・覚醒下・内視鏡

脳腫瘍の手術には主に3種類があります。最も一般的なのが開頭手術です。

手術の種類概要主な適応
開頭手術頭蓋骨の一部を一時的に外し、脳に直接アクセスして腫瘍を摘出するほとんどの脳腫瘍(グリオーマ・髄膜腫・転移性脳腫瘍など)
覚醒下手術(Awake Surgery)手術中に患者を一時的に覚醒させ、会話・動作で機能確認しながら腫瘍を摘出する言語野・運動野など機能的に重要な部位に近い腫瘍
内視鏡手術小さな穴から内視鏡を挿入して腫瘍に到達する低侵襲手術脳室内腫瘍・下垂体腫瘍など特定部位
💡 「覚醒下手術」とは? 手術中に一時的に麻酔を浅くして患者さんに目を覚ましてもらい、「言葉を話す」「手足を動かす」などの課題をしてもらいながら腫瘍を摘出する方法です。言語野・運動野など機能的に重要な部位に近い腫瘍で選択されることが多く、後遺症リスクを最小限にしながら最大限の摘出を目指します。

📋 手術前の準備|入院・検査・脳マッピング

手術が決まると、通常は手術日の1〜3日前に入院します。検査と説明、心の準備の時間です。

入院〜手術当日までのスケジュール(目安)
  • 1 入院(手術1〜3日前)

    採血・心電図・胸部レントゲンなどの全身状態の確認、麻酔科の診察、必要に応じて脳機能評価(言語・運動・認知機能)が行われます。術後の比較基準を作るための評価でもあります。

  • 2 術前MRI・脳マッピング

    造影MRIや機能的MRI(fMRI)・拡散テンソル画像(DTI)で、腫瘍の位置・周辺の重要な神経経路を3D化します。覚醒下手術ではこの情報をもとにナビゲーションシステムを使って手術が進められます。

  • 3 同意書の確認・家族との時間

    手術内容・リスク・代替治療の説明を受け、同意書にサインします。不安なことは遠慮なく聞いてください。家族と過ごす時間も大切に。

  • 4 手術前夜・当日朝

    手術前日は21〜22時頃から飲食制限(前日の夕食まで・水分は当日朝まで等、施設による)。当日朝は剃毛・浣腸・手術着への着替え・点滴ルート確保などが行われます。

🏥 手術当日の流れ|全麻〜摘出〜閉頭

手術時間は腫瘍の大きさ・部位によって異なりますが、4〜8時間が一般的です。覚醒下手術はもう少し長くなる傾向があります。

  • 1 手術室入室・全身麻酔導入(約30分)

    手術室で麻酔科医がモニタリング装置を装着、点滴から麻酔薬を投与します。気管挿管後、頭部固定装置(メイフィールドピン)で頭をしっかり固定します。

  • 2 頭皮切開・開頭(約30〜60分)

    頭皮を切開し、頭蓋骨の一部(骨弁:こつべん)を一時的に外します。硬膜(こうまく:脳を包む丈夫な膜)を切開し、脳の表面が見える状態に。

  • 3 腫瘍摘出(2〜5時間)

    顕微鏡下で慎重に腫瘍を摘出。ナビゲーションシステム・術中MRI・術中蛍光(5-ALA)などで腫瘍の境界を確認しながら最大限の摘出を目指します。重要な神経機能を損なわないよう細心の注意を払います。

  • 4 閉頭・閉創(約30〜60分)

    硬膜を縫合し、外していた骨弁を元に戻して固定。頭皮を縫合して手術終了。骨弁は通常そのまま戻すため、術後CTで「頭蓋骨が欠けている」ように見えることはありません

  • 5 麻酔覚醒・ICUへ移送

    麻酔から覚醒後、ICU(集中治療室)または高度ケア病棟に移送。一般的に術後24〜48時間はICUで全身管理されます。

🌿 ZUN体験談|第3話より

「自分の足で手術室へ。6時間後、目を覚ました手術室」

右前頭葉腫瘍の摘出で、私は右額〜耳上まで頭蓋骨を一時的に除去する開頭手術を受けました。手術前日、妻と娘とビデオ通話をしながら「絶対に帰る」と約束して眠ったのを覚えています。

当日、不思議と恐怖よりも「やっと終わる」という気持ちが強く、自分の足で手術室まで歩いて行きました。麻酔が効くまでの数秒、家族の顔を思い浮かべました。

気がつくと手術台の上で6時間が経過。「無事に終わったよ」と言われた瞬間、生きていることへの感謝が溢れました。腫瘍は完全摘出に成功。PTとして「医療の力ってすごい」と改めて感じた瞬間でした。

🌡️ 術後の経過|ICU〜一般病棟〜退院

術後は段階的に活動範囲が広がっていきます。個人差はありますが、合併症がなければ術後7〜14日で退院することが多いです。

時期主な様子ケア・リハビリ
術後0〜2日(ICU)意識レベル・神経症状・バイタル監視。点滴・酸素・尿カテーテル管理医師・看護師による全身管理。早期離床の準備
術後3〜5日一般病棟へ。創部痛・頭痛・倦怠感が残るが徐々に改善PT介入開始(座位・立位・歩行訓練)。OT・STも必要に応じて
術後6〜10日抜糸(術後7〜14日)。シャワー許可。日常動作の再獲得歩行距離拡大。階段・ADL訓練。退院に向けた家族指導
術後10〜14日退院判定。外来通院に切り替え。追加治療の検討自宅でのセルフケア指導。外来リハビリ・追加治療の説明
🚨 すぐに医師に伝えるべき術後の異変 ・突然の激しい頭痛 ・意識がぼんやりする・混乱する ・手足の麻痺・しびれの急な悪化 ・視野の異変 ・言葉が出にくい ・けいれん発作 ・傷口の赤み・腫れ・滲出液
これらは脳出血・脳浮腫悪化・感染症のサインの可能性があります。

⚠️ 術後の合併症・後遺症について

開頭手術には一定のリスクがあります。事前に知っておくことで、術後の変化に冷静に対応できます。

⚡ てんかん発作

術後発生頻度10〜30%。抗てんかん薬で予防・抑制。発作が起きていなくても予防投薬が継続されることが多い。

🦵 運動・感覚障害

腫瘍部位によって手足の麻痺・しびれが出現。術後早期からのリハビリで多くは段階的に改善する。

💬 言語・認知障害

言葉が出にくい・記憶力低下・注意障害(高次脳機能障害)。OT・STのリハビリで回復を促す。

🌫️ 脳浮腫

脳のむくみ。頭痛・倦怠感・ぼんやり感の原因。ステロイドで軽減。退院後数週間で徐々に改善。

🩸 出血・感染

術後出血(頻度1〜5%)・創部感染(1〜3%)。早期発見が重要。傷口の観察を毎日続ける。

😴 脳疲労・気分変化

異常な疲れやすさ・感情のコントロール困難。正常な反応として理解し、無理せずペーシングが大切。

💡 後遺症は「永続的」とは限らない 術後の機能障害の多くは、神経可塑性(脳が新しい経路を作る能力)とリハビリにより数か月〜数年かけて段階的に改善することが知られています。「今の状態が一生続く」と決めつけず、根気強くリハビリを続けることが大切です。

🏃 術後リハビリ|早期離床から長期回復まで

術後リハビリは「早期から開始するほど回復が早い」ことが研究でも示されています。当院でも術後早期からPT・OT・STが介入する体制を整えています。

リハビリ職種の役割

🦵 PT(理学療法士)

歩行・移動・バランス・基本動作の専門家。術後早期からの離床・歩行訓練を担当。退院後の自宅環境評価も。

🖐️ OT(作業療法士)

食事・着替え・入浴などの日常生活動作(ADL)の専門家。高次脳機能障害への対応・自助具提案も。

💬 ST(言語聴覚士)

言語・嚥下・認知の専門家。「話す」「飲み込む」「考える」の機能回復を支援。失語症・誤嚥対策。

🧠 神経心理士

記憶・注意・遂行機能などの高次脳機能評価と認知リハビリテーション。社会復帰のサポート。

🌿 ZUN体験談|第4話より

「補足運動野近傍の手術で左手足機能低下。地味な訓練の積み重ね」

私の腫瘍は補足運動野(ほそくうんどうや:手足の動きを調整する脳の部位)近傍にあったため、術後左手足の動きが低下しました。術後3日間は微細発作・吐き気・38度超の高熱が続き、本当に辛かった時期です。

リハビリは退院後も自宅で続けました。ゴルフボールを握る・ビー玉をつまむ・粘土で指を動かす——派手さはないけれど、毎日コツコツ繰り返しました。立ちくらみと感情コントロール困難が1〜2か月続いたのも、PTの知識があるからこそ「想定内」と冷静に向き合えました。

昨日より少しだけ動ける」を積み重ねる——それが術後リハビリの本質です。焦らず、でも止まらずに。

❓ よくある質問

手術はどのくらい時間がかかりますか?

腫瘍の大きさ・部位・手術方法によって異なりますが、4〜8時間が一般的です。覚醒下手術はもう少し長くなることがあります。手術時間が長い=危険、というわけではなく、慎重に確認しながら進めるためです。

頭を剃るのですか?髪はどのくらい剃りますか?

施設・術式により異なりますが、切開する部分のみ剃毛することが多く、全剃りは稀です。最近は最小限の剃毛で対応してくれる施設も増えています。気になる場合は事前に担当医に確認してください。

術後の痛みはどのくらい続きますか?

創部痛・頭痛は術後数日が最も強く、徐々に和らぎます。退院時には鎮痛剤でコントロールできるレベルになることが多いです。痛みが強い場合は我慢せず医師・看護師に伝えてください。

後遺症は必ず残りますか?

腫瘍の部位・大きさ・摘出範囲によって異なります。術後一時的に症状が出ても、リハビリで段階的に改善することが多いです。「神経可塑性」により脳は新しい経路を作る能力があるため、根気強いリハビリが回復への鍵となります。

運動・仕事はいつから再開できますか?

軽い日常生活は術後数週間で再開できますが、激しい運動・仕事復帰は術後2〜3か月以降が目安です。運転は道路交通法上、てんかん発作リスクの観点から長期間(最大2年)制限される場合があります。必ず担当医の許可を得てから再開してください。

入院中、家族はどう過ごせばいいですか?

面会は施設のルールに従ってください。家族の存在は患者の精神的支えとして大きな力になります。ただし、家族自身も「第二の患者」として疲弊しやすいので、無理せず休息を取ることも大切です。

📝 まとめ|「正しく知る」ことが不安を減らす

この記事のまとめ

  • 脳腫瘍の手術には開頭・覚醒下・内視鏡の3種類。最も一般的なのは開頭手術
  • 手術当日は4〜8時間が目安。麻酔導入→開頭→摘出→閉頭の流れ
  • 術後はICUで24〜48時間管理、その後一般病棟へ。合併症なければ7〜14日で退院
  • 合併症(てんかん・運動麻痺・脳浮腫など)は多くがリハビリで改善する
  • 術後リハビリはPT・OT・ST・神経心理士のチームで行われる。早期開始が回復の鍵
  • 「昨日より少しだけ」を積み重ねる。焦らず、でも止まらずに

手術への不安は誰にでもあります。でも「正しく知る」ことが不安を減らす最大の方法です。担当医・看護師・PTに遠慮なく質問してください。私(ZUN)も同じ道を歩んで、今があります。

📚 参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「脳腫瘍〈成人〉 治療」. https://ganjoho.jp/public/cancer/brain_adult/treatment.html
  2. 日本脳腫瘍学会「脳腫瘍診療ガイドライン 成人脳腫瘍編 2024年版」金原出版. 2024.
  3. 日本脳神経外科学会. https://jns.umin.ac.jp/
  4. Johns Hopkins Medicine. “Craniotomy.” https://www.hopkinsmedicine.org/health/treatment-tests-and-therapies/craniotomy
  5. Mayo Clinic. “Brain tumor — Diagnosis and treatment.” https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/brain-tumor/diagnosis-treatment/drc-20350088
  6. National Brain Tumor Society. “Recovery from Brain Surgery.” https://braintumor.org/brain-tumors/diagnosis-treatment/stages-of-treatment/after-surgery-before-treatment/recovery-from-brain-surgery/
  7. Stupp R, et al. “Radiotherapy plus concomitant and adjuvant temozolomide for glioblastoma.” NEJM. 2005;352(10):987-996. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15758009/
  8. Gehring K, et al. “Cognitive rehabilitation in patients with gliomas.” Lancet Neurology. 2017;16(9):748-760. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28774401/
  9. Khan F, et al. “Rehabilitation in primary brain tumors.” 2019. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6664613/
  10. Englot DJ, et al. “Seizures and epilepsy in patients with brain tumors.” Neurosurgical Focus. 2015;38(1):E1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25552280/
  11. 慶應義塾大学病院脳神経外科教室「開頭手術について」. https://www.neurosurgery.med.keio.ac.jp/
  12. Cancer Research UK. “Brain tumour surgery.” https://www.cancerresearchuk.org/about-cancer/brain-tumours/treatment/surgery
⚠️ 本記事はPT(理学療法士)でもある脳腫瘍サバイバーZUNが、自身の体験と医学的知識をもとに作成した情報提供記事です。手術の適応・方法・リスクについては必ず担当医師にご相談ください。

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ZUN
🩺 理学療法士|脳腫瘍サバイバー|長野県在住 2016年に理学療法士の国家資格を取得し、総合病院の急性期病棟で 脳卒中・整形外科リハビリを担当(糖尿病療養指導士/呼吸器リハ研修・がんリハ研修修了)。 2024年、悪性星細胞腫グレード3を発症。手術・放射線・化学療法を経て 現役で職場復帰。「医療者の知識」と「患者の実体験」の両方から、 脳腫瘍患者さんとご家族の力になる情報を発信しています。 詳細プロフィールは👇https://zunsyuyotaiken.com/profile/