放射線治療中の生活ガイド|副作用対策と毎日の乗り越え方をPT・脳腫瘍サバイバーが解説

「放射線治療が始まったけど、日常生活はどうすればいいの?」——治療中の脱毛・疲労・皮膚のトラブルに不安を感じている方は多いと思います。
結論からいうと、放射線治療の副作用は「正しいケアの方法」を知っているだけで、毎日の生活がずっと楽になります。皮膚の保湿タイミング・ウィッグの準備時期・疲れとの向き合い方——これらには「知っておくとよかった」コツがあります。
- 放射線治療中に起きやすい副作用の種類と時期
- 皮膚炎・乾燥への正しいケア方法(保湿のタイミングも解説)
- 脱毛に備えたウィッグ準備のコツ(男性向けヒントも)
- 疲労・吐き気・食欲不振への日常的な対処法
- ZUNが実際に放射線治療中にやってよかったこと・後悔したこと
💡 結論|副作用は「知識とケア」で乗り越えられます
- 疲労・脱毛・皮膚炎は放射線治療中に多くの方が経験する自然な経過です
- 保湿クリームは照射の2〜4時間前は避け、照射後に使用するのが基本(施設に要確認)
- ウィッグは治療開始前に準備が理想。男性も女性用ウィッグを美容院でカットできます
- 脱毛は照射野のみで、多くの場合6か月〜1年で回復することが多いです
- 困ったことは自己判断せず、担当の放射線技師・看護師に相談してください
⚡ 放射線治療中に起きやすい主な副作用
放射線治療の副作用には、治療中〜直後に起きる急性副作用と、治療後数か月〜数年後に起きる晩期副作用があります。ここでは日常生活に影響する急性副作用を中心に解説します。
| 副作用 | 起きやすい時期 | ポイント |
|---|---|---|
| 疲労・倦怠感 | 1〜2週目〜終了後も | 最も頻度が高い。「普通の疲れ」と異なる脳の疲れ。休息を優先して |
| 脱毛(照射野のみ) | 2〜3週目〜 | 全脱ではなく照射した部分のみ。多くは6か月〜1年で回復することが多い |
| 皮膚炎・乾燥 | 2〜4週目〜 | 赤み・かゆみ・乾燥が出やすい。保湿と刺激回避が重要 |
| 吐き気・食欲不振 | 治療中〜直後 | テモダール(テモゾロミド)併用時は特に注意。制吐剤を事前処方してもらうと安心 |
| 一時的な脳浮腫悪化 | 治療開始〜数週間 | 頭痛・ふらつきが強くなる場合も。ステロイドで管理。症状が強い場合はすぐ担当医へ |
🧴 照射部位の皮膚ケア
放射線は照射した皮膚にも影響を与えます。適切なケアをすることで、皮膚炎の悪化を防ぎ、不快感を和らげることができます。
1保湿クリームのタイミングと選び方
保湿はとても大切ですが、照射の2〜4時間前は皮膚に何も塗らないようにしましょう(施設によってルールが異なるため、担当スタッフに必ず確認してください)。
✅ 推奨タイミング
- 照射後〜就寝前
- 朝(照射の数時間前まで)
✅ 製品の条件
- 無香料・無アルコール
- 低刺激(ビーソフテン・ヒルドイドなど)
- 担当医に処方してもらえる場合も
2UVカット素材の着用と日焼け対策
放射線治療後の皮膚はUV(紫外線)に対して敏感になっています。外出時はUVカット素材の帽子・スカーフなどで照射部位を覆いましょう。治療終了後も1年程度は日焼けに注意することが推奨されています。
3照射部位に避けるべきこと
- 強くこする・掻く(かゆくても優しく冷やす)
- 熱いお湯・サウナ・長時間の入浴
- 香料入りのシャンプー・石けん・制汗剤
- テープ・絆創膏の繰り返し貼り直し
- きつい帽子やヘルメットの長時間着用
💇 脱毛への備えとウィッグ選び
脳への放射線治療では、照射した頭部の範囲のみ脱毛が起きることが多いです。全頭脱毛ではなく照射野のみの部分的な脱毛が多いとされています(照射範囲や線量による)。
1ウィッグは治療開始前に準備するのが理想
脱毛が始まってからウィッグを探すと気持ちが焦りやすくなります。治療開始前〜治療初期のうちに試着・購入しておくと安心です。
2坊主にするという選択肢
部分脱毛が進むと外見が気になることがあります。思い切って治療前〜治療中に短く切る・坊主にすることで、脱毛の過程を前向きに乗り越える方も多くいます。「自分で決めた」という感覚が、気持ちの整理にもつながることがあります。
😴 疲労・倦怠感との向き合い方
放射線治療中の疲労は「普通の疲れ」とは異なります。脳への照射が続くことで脳自体のエネルギー消費が増え、休んでも疲れが取れにくい状態になることがあります。これは「がん関連疲労(Cancer-Related Fatigue)」と呼ばれ、多くの患者に見られます。
✅ 疲労への対処法
- 治療のある日は帰宅後の休息を計画する
- 「疲れた後に休む」より「疲れる前に休む」
- 睡眠を最優先にする(昼寝も可)
- 家事・仕事の負担を周囲に相談して減らす
💡 軽い運動が有効
- 10〜20分程度のゆっくりウォーキング
- 激しい運動はNG。「気持ちいい」程度が目安
- 有酸素運動はがん関連疲労の改善に有効とされています
🤢 吐き気・食欲不振への対処
放射線治療単独でも吐き気が出ることがありますが、テモゾロミド(テモダール)と同時に行う場合は特に吐き気・食欲不振が強くなることがあります。
🩺 制吐剤は事前に処方してもらう
吐き気が出てから対処するより、治療開始前に主治医・担当医に「吐き気止めを処方してほしい」と伝えておくのがベストです。メトクロプラミド(プリンペラン)などが処方されることがあります。
🍱 食事の工夫
- 一度に多く食べず、少量を回数を分けて食べる
- 温かい食事より冷ましたものはにおいが少なくて食べやすいことが多い
- 空腹時に吐き気が出やすい方は軽く何か口にしてから服薬・治療に臨む
- においが強いもの(油もの・香辛料)は避ける
「固定シェルのむせ込みと、坊主を選んだ日のこと」
放射線治療では、頭部固定シェル(マスク)を顔に装着した状態でベッドに固定され、照射を受けます。私の場合、このシェルが口元を圧迫する感覚があり、照射中に「むせ込みそうな感覚」を何度か経験しました。事前に技師さんに伝えると対応してもらえたので、気になることはすぐに相談することが大切だと実感しました。
脱毛については、照射した頭頂部〜後頭部のみが抜け、周囲の髪が残る状態になりました。見た目のバランスが気になり、思い切って坊主にすることを選びました。「自分で決めた」という感覚があったので、意外と気持ちの整理がつきやすかったです。
テモダールとの同時治療中は、服用3日目あたりから倦怠感・吐き気・便秘が重なる時期がありました。制吐剤と、体調が許す範囲での軽い有酸素運動(歩行)を組み合わせたことで、少しずつ楽になっていきました。
❓ よくある質問(Q&A)
治療中もシャンプーはしていい?
はい、基本的にシャンプーは可能です。ただし、無香料・低刺激のシャンプーを使い、ぬるま湯でやさしく洗うことが大切です。強くこすったり、爪を立てたりしないようにしましょう。施設によって指定がある場合もあるため、担当看護師に確認してみてください。
保湿クリームは何を使えばいい?
無香料・無アルコールの低刺激なものが推奨されます。ビーソフテンクリームやヒルドイドなどが使われることが多いですが、施設や担当医によって推奨品が異なる場合があります。自己判断せず、放射線技師か看護師に確認するのが最も確実です。
脱毛した髪はいつ頃戻る?
放射線による脱毛は、多くの場合治療終了後6か月〜1年程度で回復することが多いとされています。ただし照射線量が高い場合や照射範囲によっては、回復に時間がかかったり、完全には戻らないこともあります。担当医に自分の照射条件と見通しを確認しておくと安心です。
放射線治療中に運動してもいい?
体調が許す範囲での軽い有酸素運動(ウォーキングなど10〜20分程度)は、がん関連疲労の改善に有効とされています。ただし激しい運動や疲れを感じる運動は避けましょう。「気持ちいいと感じる程度」が目安です。不安な方は担当医に相談してから始めましょう。
固定シェルが苦しいときどうすればいい?
遠慮せず放射線技師に伝えてください。シェルの締め付け調整・呼吸タイミングの工夫など、対応してもらえることがあります。閉所恐怖症や不安が強い場合は、軽い抗不安薬を主治医に相談する選択肢もあります。
📝 まとめ|治療中の生活で大切にしたいこと
放射線治療中のセルフケア|要点
- 皮膚ケアは「照射後に保湿」が基本——照射直前の保湿は避け、無香料・低刺激クリームを使う
- ウィッグは治療前に準備——男性も女性用ウィッグ+美容院カットという選択肢がある
- 疲れる前に休む——がん関連疲労は「意思」では乗り越えられない。休息を計画に組み込む
- 吐き気止めは事前に相談——出てから対処より、治療開始前に処方してもらうと安心
- 何でも放射線技師・看護師に聞いてOK——「こんなこと聞いていいのか」と遠慮しない
📚 参考文献
- 日本放射線腫瘍学会(JASTRO)「放射線治療中から直後の生活について」. https://www.jastro.or.jp/customer/qa/cat2/
- SURVIVORSHIP.JP「放射線治療の副作用(有害事象)と対策」. https://survivorship.jp/cancer-radiotherapy/measures/01/
- SURVIVORSHIP.JP「放射線治療と脱毛|治療時期と脱毛」. https://survivorship.jp/radiotherapy-datsumou/know/02/index.html
- 国立がん研究センター がん情報サービス「脳腫瘍〈成人〉治療」. https://ganjoho.jp/public/cancer/brain_adult/treatment.html
- 日本脳腫瘍学会「脳転移 診療ガイドライン 2024」. https://www.jsn-o.com/guideline2024/metabraintumor2024.html
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