第3話:人生3度目の手術。「まな板の鯉」になったPT

🏥 過去2回の手術経験と、今回との決定的な違い
私の人生において、手術室に入るのはこれが3度目でした。小学1年生の時の右腕骨折(滑り台に挟まり…笑)、高校生での左薬指脱臼骨折🏀。
これまでの手術は「壊れた箇所を直す」感覚でしたが、今回は違います。自分の「脳」にメスが入る。リハビリ職として多くの術後患者さんと向き合ってきたからこそ、「また元の元気な姿で家に帰れるだろうか」「後遺症は残るだろうか?」という、理学療法士としての知識と一人の人間としての不安が入り混じっていました。
🧠 右前頭葉腫瘍の摘出術、主治医からの説明
手術の方法は、右の額から耳の上まで頭蓋骨を一時的に取り外し、ガイドピンを用いて正常な組織を傷つけないよう腫瘍を摘出するという、スタンダードなものでした。
私が運ばれた病院には最新鋭の設備はありませんでしたが、先生の説明を聞き、自宅での生活を過ごす中で、少しずつ「もう、やる他ない」と腹を括ることができました。手術前夜には、恐怖を乗り越え、前向きなマインドセットが整いました。
客観的には普通に見えたかも知れませんが、ただ強がっていただけというのは、「しー。」🤫です。
🚪 手術当日、ウォークインからの「まな板の鯉」
手術当日は、てんかん以外には身体の症状が無かった為、自分の足で歩いて手術室へ向かいました。
手術台に上がると、そこからは看護師さんたちの独壇場です。テキパキとした点滴の準備、姿勢の調整、そして麻酔。リハビリの現場では指示を出す側の私も、この時ばかりはプロの仕事に身を委ねる「まな板の鯉」状態になっていました。その手際の良さに安心感を覚えながら、全身麻酔で深い眠りに落ちていきました。
👨👩👧 家族の声に導かれたICUでの目覚め
約6時間に及ぶ手術を終え、意識を取り戻したのは手術室の中でした。
深い闇の中から意識が浮上する際、耳元で私を呼ぶ妻と娘の声が聞こえた気がしました。家族の声に導かれるように目を開けると、執刀医の先生から「無事に腫瘍はすべて摘出できました。見たところ、そこまで悪いものではないと思います」という言葉が。その一言で、私の長い1日は安堵と共に幕を閉じました。
その時も強がって「予定より長かったですね。」が執刀医に言った第一声。今思えば、真っ先に感謝を伝えればよかったと後悔…。
🩺 PT(理学療法士)として、振り返って思うこと
リハビリ職として、私はこれまで何人もの開頭術後の患者さんと関わってきました。「手術頑張ってきますね」と病室で見送り、術後リハビリ室で再会する——それが私の役割でした。
でも、自分が手術室の扉をくぐる側に立って、初めて知ったことがあります。手術前夜の眠れなさ。「予定より長かった」と平静を装って強がってしまう気持ち。当事者として通過してみると、これらは決して「気の持ちよう」では片付けられない、深い感情の波でした。
今、患者さんのベッドで術後初めてのリハビリを行うとき、私は業務的ではなく心からの「お疲れ様でした」を言うようになりました。
そして、家族の声が麻酔の闇から私を引き上げてくれたあの感覚は、今でも忘れられません。家族の存在が、医学では測れないところで治療を支えていることを、強く実感した瞬間でした。











